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2010年08月10日
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カテゴリ:読書
梅崎春生の「桜島」を再読した。

終戦間際、桜島の通信科に配属された、村上兵曹の心象風景を描いた作品である。


沖縄は、陥落し、ロシアの参戦を知り、ヒロシマのビルが砕け散る。情報だけが流れ込んでくる中、武器を持たない彼らは、敵の上陸に対する恐怖と闘い続けている。

ある日、召集されて聴いた玉音放送は、通信状態が悪く、正しい内容が伝えられたのはその日の夕方だった。


好むと好まざるとに関わらず巻き込まれた戦争の中では、誰もがその場の役割をこなすか、運を天に任せて逃げるしかない。

大岡昇平の「野火」で描かれた戦場の極限とは別の、本土を背負わされた生身の極限がここに描かれているのではないか。


この作品は、講談社文芸文庫が発刊されて、はじめて知った。

そして、戦争の現実を描いた作品を読む度に、自分達の先達があの悲惨な戦争を導いたことに怒りを感じ、その責任を東京裁判にすべて押し付けて、平和な国を標榜している日本人であることに恥ずかしさを感じる。


つい最近(江戸時代)まで腰に刀を差した人種が治めていた国に、欧米列強を背にした状態でのアジア進出に、平和的解決を求めるの無理な話だったかもしれないが、だからといって、起こしてしまった戦争の責任を、戦勝国による一方的な裁判と、上層部が金で解決したと切り捨てるような不人情を許し続けるのはどうかと思う。


民主党が、この問題とアジアの心情(日本人の責任感情の喚起も含めて)をどれほど動かすことができるかは、この夏の国際政治の山場ではないかと思う。






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最終更新日  2010年08月10日 16時15分52秒
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