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カテゴリ:読書
数年前、放送大学の『文学の愉しみ』という授業を履修しようとした。しようとしたと書いたのは、過敏性大腸がひどい時期で試験に行けそうも無くで単位を諦めたということでもあり、ほんとうのところは、通信指導の問題が苦手な記述式(小論文)だったから、授業だけ聴いて病気に埋没することにした。(つまり単位は落としたし、受験資格も得られなかった) だけど、この本の訳者でもある柴田元幸先生が紹介してくれた、現代のアメリカ文学に興味を持ち(元々夫が英米文学科を出ていることもあり)、書店で海外文学の棚を見ていて、この本を見つけた。(教科書に載っていた本は、一冊も見つからず、いまも見つけていない) 読んでみた感想は、軽やかなのに重い。という不思議な感覚だ。これは、現代の優れた小説が持つ共通の特徴ではないかと思う。 そして、軽く、鮮やかな語り口で現場の風景が映し出されていくのに、全体像は一向に見えてこない。(最後まで読んでようやく登場人物それぞれの関係性が理解できたほどだ) 社会の片隅で、保護されたようでもあり、阻害されたようでもある主人公と、その周辺の人々が織りなす、ある種のファンタジーとも読める。 だからといって、そこに完結する物語を期待してはいけない。 現代音楽のように、不協和音の束が、やがて不思議な空間を作り上げるような、不思議な作品なのだ。 サリンジャーのハプワース・・・や、サム・シェパードのモーテル・クロニクルズが好きだという方には、おすすめしてもいいかなと思う。 こういう本は、趣味は読書だからと、字面を見ずに買ってはいけないという警告を含めて。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年10月30日 18時51分54秒
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