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カテゴリ:韓国映画
同い年の売春婦と宿屋の娘との対立と共感を描き出した秀作。韓国の異才キム・ギドク監督の長編第3作で、日本では劇場未公開作品であったものだ。
渋谷のユーロスペースで開催中の「スーパー・ギドク・マンダラ」にて鑑賞(2007/3/12)。 評価:☆☆☆☆ 一幅の裸体画を抱えて、ソウルから海辺の町に流れついた売春婦のジナ(イ・ジウン)。浜沿いにある青い門のひなびた民宿に住み込んで、客を取りはじめる。民宿の一家は長い間、住まわせた娼婦の稼ぎで生計を立ててきた。 ギドク監督にしては、珍しく後味のよい作品である(と断言してしまうとちょっと語弊があるか)。 ジナの過去に何があったのか、映画の中では直接描かれてはいないが(腐れ縁の彼氏を通して多少窺いしることが出来るが)、内面はある種の哀しみと、孤独感に満ちている。 一方のヘミも、(これまた映画の中では描かれてはいないが)たぶん幼い頃から家業ゆえに理不尽な蔑視を受けてきて(友達もできず)、その苛立ちと募る憎悪を娼婦にぶつけながらも、性に対する臆病さから彼氏との間の壁を埋められず、じつは孤独に苛まれている。ジナとヘミの対立は、ヘミの彼氏を通じてピークに達するが、息子と関係したことを知って一転してジナに怒りをぶつける母親の姿に、ジナの孤独に思い至ったヘミは、それからジナを観察し少しずつジナへの共感を抱き始める。そんなヘミの変化していく様子に、ジナもヘミの孤独を見い出していく。そして、息子の撮ったジナのヌード写真をめぐるいざこざを通して、ジナは家族の一員として受け入れられはじめ、二人の間を遮る“壁”としての性の行為は、二人を結びつける“絆”としての性の行為に転換していく。 この辺りの一連の流れの演出のうまさは、本当に心憎いばかりである。とくにヘミが雪玉を握って転がし、ジナが気が付いたときには、ヘミは客のいる部屋へ消えているというあたりの流れは、ずっしりとくるものがある(しかし、初体験の相手が客というのは、ヘミは自分で納得しているからよいとして、結婚するまで待つことにした彼氏には、ちょっと可哀想というか残酷な展開かも)。 早くも3作目にしてギドク監督の演出力が冴えわたった感がある傑作。 『悪い女 ~青い門~』 【製作年】1998年、韓国 【製作】プギ映画 【配給】ケンメディア 【監督・脚本】キム・ギドク 【撮影】ソ・ジョンミン 【音楽】イ・ムニ 【出演】イ・ジウン、イ・ヘウン、チャン・ハンソン、イ・イノク、アン・ジェモ ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.04.03 15:14:34
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