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カテゴリ:外国映画(ヨーロッパ)
『シェルブールの雨傘』や『ロバと王女』などの傑作ミュージカルを作ったジャック・ドゥミ監督の処女長編作で、初恋の人を7年間待ちつづける踊り子と、彼女に想いをよせる幼馴染みとを中心にした“初恋”、またはすれ違いの物語。
ジャック・ドゥミという名は、一部の人には『ベルサイユのばら』の監督と言った方が通じるかもしれない。 現在、フランス映画祭が開催中だが、その特別イベントとしてユーロスペース(3/27からは東京日仏学院)で行われている「ジャック・ドゥミ、結晶(クリスタル)の罠」にて鑑賞(2007/3/20)。 『ローラ』 評価:☆☆☆ 「初恋――それはいつまでも残るもの」という映画の中のセリフが、全体の主題といってよいだろう。 ネタバレになるが、7年間初恋に生きる純粋さをもった女性ローラの、その初恋が成就してしまう展開は、「現代のおとぎ話」と呼ぶにふさわしい恋物語である。といって、決して甘い香りが漂うものではなく、多くの出会いとすれ違いを通して、厳しく、そして美しく描き出している。 そして、そのローラの初恋の人、ミシェルにもちょっとしたサイドストーリーが用意されているあたり、登場人物に無駄がないというか、話がうまく織りあげられている。 映画で写し出されるナントの港町は、ドゥミ監督の生まれ故郷だという。そのためか、彼の作品には港町を舞台にしたものが多いように思うが(と断言できるほど作品を観ている訳ではないが)、たぶんそれは、港が到着と出発とを繰り返す場所で、その数に倍する人の出会いと別れが存在するからだろう。 初めての長編で、一見おとぎ話の体裁をとりながら、人と人との出会いと別れを通して、信じて生きることの素晴らしさを真正面から訴えていることの意義は大きいと思う。生きる希望が湧くというか。 処女作にすべてがある、とはよく言われることだが、ローラたちが歌って踊るシーンに、後のミュージカル映画の傑作群への萌芽が見られるし(そもそも『ローラ』は、「ヨハネスブルグへの切符」というアヌーク・エメを主演にしたカラー・ミュージカルの企画だったという)、その後しばしば描かれる「すれ違い」は本作の重要なテーマだ。 しかし、それよりもこの『ローラ』の主要な登場人物が、その後のドゥミ作品に登場することだ。 ローラのその後の人生は『モデル・ショップ』で描かれるし、ロランは宝石商となって『シェルブールの雨傘』に再び登場する(というのはパンフレットを読むまで気づかなかったが……)。 また、少女セシルとフランキーの関係は明らかにかつてのローラとミシェルの関係をなぞらえている訳だが、踊り子になるためにシェルブールへと家出するセシルのその後の人生は、『シェルブールの雨傘』でカトリーヌ・ドヌーヴが演じたジュヌヴィエーヌの人生に重なる。 細かいところでは、カフェのマダムの会話に出てくる靴屋のファヴィニは、ドゥミ監督の遺作『想い出のマルセイユ』でも書店の店主?の婦人とイヴ・モンタンとの会話にも出てきたりする。 モノクロ作品でもあり、すべての人にお薦めできるわけではないが、“初恋”という誰にでも訪れる人生の重大“事件”を扱った秀作として一見の価値あり。
『ローラ』 Lola 【製作年】1960年、フランス(日本公開1992年) 【配給】ユーロスペース 【監督・脚本】ジャック・ドゥミ 【撮影】ラウール・クタール 【音楽】ミシェル・ルグラン 【出演】アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、ジャック・アルダン、アラン・スコット、エリナ・ラブールデット、アニー・デュペルー ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.03.22 09:18:50
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