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カテゴリ:韓国映画
映画館を後にして街に出たとき、いま観た映画に出演していた女優に出会ったら? というシチュエーションで綴られた、ちょっと変わった韓流ラブストーリーという趣の映画。
東京・渋谷にあるシアター・イメージ・フォーラムにて開催中の韓国アートフィルム・ショーケースにて上映のものを鑑賞。 『映画館の恋』 評価:☆☆ 韓国アートフィルム・ショーケースで上映されるだけあって、少し凝った構成。 前半は映画内映画であり、後半はその映画を観た観客の物語。詳しくは【あらすじ】参照(ネタバレ有り)。 もしかしたら凄く味わいのある映画なのかもしれないが、私にはよく分からなかった。 監督はホン・サンスで、個人的には、私の大好きな故イ・ウンジュ嬢の初主演作『オー!スジョン』を撮った監督ということもあり、それなりに注目して観に行った(『オー!スジョン』自体は未だに見ることができないでいる。韓国版のDVDを購入すればよいのだが、語学力に全く自信がないので……)。 が一言感想は上述の通り。ホン・サンス監督の作品は『気まぐれな唇』『女は男の未来だ』を観ているが、いずれも今ひとつだった印象がある(あ、どちらも本作よりは面白かった)。 前半では、なぜ主人公たちが心中しようとするのかが全く分からない。 いや、女性の方は(たぶん)高校を中退して検定を受けようかという状況だから、将来に展望が見えず、また(それが原因で)家族ともうまくいっていない様子がセリフから垣間見られるが、男性の方は大学に受かってお金に困っているようにも見えず、ラストで○○と確執のあるように説明されるが、それって死ぬほどのことなのだろうか。 自分の10代最後のころを振り返っても、ちょっと納得できない。国と世代が違うと言えばそれまでだが。 後半は、主人公がストーカーのようにしか思えず、まったく感情移入できなかった。彼女は何で彼と寝たんだろう? ラストも、先輩の入院している病院を出てきて、えっそこで終わるの、というところで切れており、結局何が言いたかったのか分からないままだった。 彼女が「あなたはあの映画をわかっていない」と言うが、すみません、私もわかりませんでした。そんなに深い意味はあったのだろうか。うーん。 映像的には、過去2作ではほとんど使っていなかったズームショットを多用しているのがポイントか。 ただ、前半はそれなりに効果を上げていたように思うが、ちょっと使い過ぎで、後半は全然インパクトがなかったのが残念。 役者的には、一人二役(というのかなぁ)を演じたオム・ジウォンは、個人的には好きなタイプではあるが、主演でありながら他の出演作(『トンケの蒼い空』とか『美しき野獣』など)ほど輝いて見えないのはどうしてだろう。監督の演出力の問題か。少なくとも前半の映画内映画では全然美しくなかった(まぁ、それが19歳という微妙な年齢の象徴としていたのかもしれないが)。 キム・サンギョンは『気まぐれな唇』に続く監督作品への出演。前述のように、ストーカー以外の何者でもないのだが、逆に、そもそもそれを狙っていたとしたならば、演技は良かったということなのだろう。 役者がせっかく体当たりでセックスシーンを演じている(と思う)のに、それが全然、官能的でないのは、ある意味ホン・サンス作品のメルクマールになってしまっている感が……。役者がちょっと可哀想かも。 あと、ところどころにソウル・タワー(が正式名称なんだろうか?)が写し込まれているが、あれは何かの象徴なんだろうか? というようなことも考えると、たぶん韓国の人には自明である事項が見えなくて(分からなくて)、それで映画を理解できないのかも知れない。 鑑賞するのであれば、好き好きで。 なお、韓国アートフィルム・ショーケースで上映された4作品(『キムチを売る女』『不機嫌な男たち』『許されざるもの』それに本作)はすべて鑑賞したが、一番良かったのは『許されざるもの』。あとは、『キムチを売る女』は中国国内の朝鮮族を扱ったということで興味深くはあったが、他二つはとくに観なくてもよいように思った。 【あらすじ】(ネタバレ有り) その1:映画の物語 大学の入学試験を終えたばかりチョン・サンウォン(イ・ギウ)は、兄から貰ったこづかいを使ってしまおうと繁華街に出て、店を覗きはじめる。すると、眼鏡屋の店の中に、かつて密かに想いを寄せていた女性ヨンシル(オム・ジウォン)がいた。当時は友人の彼女であったために想いを告げることができなく、彼女が学校を中退してしまったために、二年ぶりの再会であった。彼女の方から夜に会う約束を交わしてくる。「お母さん」と題する演劇を鑑賞して時間をつぶすサンウォン。 夜、二人は食事して酒を飲み、帰り道にお腹が痛いというヨンシルを休ませるためにホテルに入る。そして体を重ねるが、サンウォンの方が立たなくて失敗、彼はふと死にたいとつぶやく。漠然と将来に不安を感じていたヨンシルも一緒に死ぬことになり、二人は薬局をはしごして睡眠薬を買いあさるが、いざとなるとサンウォンは怯んで逃げ出してしまう。後を追いかけるヨンシル。結局、再びホテルに入って睡眠薬を飲み干す。しかし、ヨンシルは途中で吐き戻して失敗、サンウォンの家に連絡を入れてホテルを抜け出し、一方のサンウォンは、小父さん(母の恋人?)に病院に連れていかれて手当を受け、家(マンション)に戻る。批難する母親に対してサンウォンは、「母との間に断絶があったから」と言い訳するが聞いてもらえず、マンションの屋上から飛び降りようと家を飛び出すが、しかし家族は誰も引き留めに来てくれなかった……。 その2:その1の映画を観た観客の物語 先輩が監督した映画を観終わったキム・ドンス(キム・サンギョン)が劇場を出ると、その映画の主演女優チェ・ヨンシル(オム・ジウォン)を見かける。帰り道、同級生の男に出会い、家族との食事に誘われる。友人は、先輩の病気がひどく重いため、本日の同窓会でカンパを募るという。ドンスは、行けるかどうかわからないと答える。同級生に車で送ってもらっている際、その子どもに貸していたマフラーを「母親に貰ったものだから」と取り上げてしまい、気まずいまま別れる。 ドンスは、ふと再びヨンシルを見かける。しばらく彼女の後を付けていくと、映画に出てきた眼鏡店に入っていった。勇気を出してドンスが声をかけ、自分の映画に出て欲しいと頼むと、彼女は少し距離を置きながらも、了承するのだった。ただ、自分の連絡先は夜の同窓会のときに渡すという。 ドンスは同窓会に遅れて顔を出した。財布を落としたと言い訳しながら、寄付金として小銭を渡す。彼が酒を飲もうとすると、酔う前に言えよと釘を刺された。酒癖が悪いらしい。しばらくしてヨンシルが来て、彼女の歌で会場は盛り上がる。ドンスは、映画で使われた歌をリクエストした。終了後、緞子はヨンシルを誘うが、用事があるからと先に帰ってしまう。 先輩の見舞いに病院に行くと、入口の前で再びヨンシルと出会う。先輩の病状は今夜が峠だという。ドンスは財布を落としたので食事を奢って欲しいと彼女に頼んだ。二人して居酒屋でかなり酒を飲むが、ヨンシルは帰り道でお腹が痛いと言い出しホテルへと入る。そして、激しいセックスの後、彼女はさっさと帰ってしまうのであった。 改めて病院へ戻ったドンスは、先輩を見舞う。「死にたくない」と叫ぶ先輩、一緒になくドンス。そして……。 『映画館の恋』 TALE OF CINEMA(原題:劇場前) 【製作年】2005年、韓国 【製作】ジョンオン社 【配給】チョンオラム 【監督・脚本】ホン・サンス 【撮影】キム・ヒョング 【音楽】チョン・ヨンジン 【出演】チェ・ヨンシル、キム・サンギョン、イ・ギウ ほか 公式サイト http://www.kaf-s.com/lineup/eigakan/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.04.16 16:25:55
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