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テーマ:アニメあれこれ(27172)
カテゴリ:日本映画(2007)
ご存じ名探偵コナンの劇場版第11作。今回のコナンは、太平洋上のリゾート島で、海賊が遺したという財宝伝説と、海底宮殿の謎に挑む。
地元のシネコンで公開初日に鑑賞。 『名探偵コナン 紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)』 評価:☆☆ (次回への期待を込めてちょっとおまけ) 【あらすじ】 江戸川コナンは、毛利探偵事務所の小五郎に連れられて、蘭や園子、阿笠博士、灰原哀、少年探偵団(光彦、元太、歩美)らと、太平洋に浮かぶ神海島(こうみじま)にバカンスにやってきた。島の近くの無人島、頼親島(よりおやじま)のそばには、300年前に海の底に沈んだ古代遺跡“海底宮殿”があった。その宮殿からは、1730年ころに活躍していた実在の女海賊、アン・ボニーとメアリ・リードが遺したという「カットラス」という刀と「ピストル」が見つかっていた。 泊まるつもりで訪れたリゾートホテルで、コナンたちは、財宝探しに集まったトレジャーハンターの3人に出会う。一週間前に海底から銀の食器が見つかったのだ。 島の観光課の岩永の紹介で、老漁師・美馬の営む民宿に泊まることになった一行は、荷物を置くなり、蘭と園子はスキューバダイビングへ出掛け、コナンと少年探偵団は観光館で女海賊の刀と銃などを見学した後、島内5箇所に設置された宝探しゲームを始める。 ダイビング中の蘭と園子が海底宮殿まで来たとき、トレジャーハンターの一人がサメの群れに襲われているのに遭遇する。仲間がなんとかサメを追い払い、島の診療所に連れ込むが、手遅れだった。 駆け付けたコナンが被害者のBCジャケットを調べると、殺人の証拠が残されていた。捜査を進めるなか、今度は観光館からカットラスとピストルが盗み出され、そして魔の手は蘭と園子にも伸びるのだった……。 青山剛昌原作の「名探偵コナン」は、言うまでもなく『週刊少年サンデー』で連載中の大人気コミック。1994年から現在まで続いている連載は『サンデー』史上最長、また1997年の『時計仕掛けの摩天楼』に始まる劇場版は、毎年GWに公開されて、各年とも興業収入の上位にランクしている。 大ヒットの秘密はいろいろとあるだろうが、何と言っても、そのクオリティの高さだろう。 TVアニメは最初期を除いてほとんど未見なので分からないが、「劇場版 名探偵コナン」シリーズは、謎とき、アクション、適度なお笑い、ラブストーリーと、様々な要素を整理よく詰め込んだ卓越したストーリー展開が秀逸。まぁたまに破綻や大ポカもあったりはするが、そこを演出力でカバーしている。 GW公開という点では、「劇場版クレヨンしんちゃん」が、子どもは子どもなりの、大人は大人なりの楽しみ方ができる二重構造的な話の作りで、くろうと筋の評判が(も)高いが、クレしん特有の“下品さ”(実際はそれほどでもないんだけどね)に抵抗を覚える人もいるだろう。 その点では、劇場版コナンは、子どもも大人も誰でも楽しめる作品に仕上がっていると思う。 ……というのは、実は一昨年までの感想で、昨年公開の10作目『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』は、正直あまり出来のよい作品ではなかった。まぁよくて☆二つかな(それまでは、☆四つが標準で、『ベイカー街の亡霊』や『銀翼の奇術師』などは☆五つ、『水平線の陰謀』は☆三つというところ)。 10周年ということでオールスターキャストではあったが、その登場人物をさばききれておらず、話の作りこみが中途半端。そもそも何故複数の探偵に依頼するのかも不明だし、爆弾のくだりも緊張感というかドキドキ感が全然感じられず(全く知らないのならともかく、自分に爆弾が付いていてああも冷静でいるか、普通)、ラストの展開も肩すかし。また、お約束の新一と蘭との“恋愛”がないのは、たまにはそういう話があっても良いだろうが、盛り上がりに欠ける本作ではそれもマイナス要因かな。 映画は小説と違って、あまりにも多くの人が絡むので一概には断定できないが、一番の問題はやはり脚本だと思う。 この10作目は、脚本家が今までの古内一成氏から柏原寛司氏に変わっている。 柏原氏はTVシリーズでも脚本を多数書いている(たしか第1話も)ことからの起用なのだろうが、彼は、元々長丁場のドラマを構成するのは苦手なのではないか。 ほかの映画の脚本(『あぶない刑事』シリーズや『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』、平成ゴジラシリーズの内3作)などを見た感想も、話の構成・展開が今ひとつだった感が否めない。 ということで、前振りがかなり長くなってしまったが(^^;)、今回の脚本も柏原氏。 で、鑑賞した結果は、事前の心配通り、昨年とどっこいどっこい、やはり出来は良くなかった。 もっとも、蘭と園子との友情を二人の女海賊に重ねるアイデアは、うまいなぁと思ったし(原作者の青山氏によるらしい)、ダイビングでの海中シーンの映像もなかなか綺麗でよかった。 あと、中学校時代の新一と蘭が見られたのも映画ならではか。 ゲストキャラの声に、昨今流行の俳優を起用せずに、プロの声優たちを起用している点も評価できる。 ただ、それ以外はちょっと誉める点が(少)ない。 そもそも“海賊”を一つの主題にするのは、このGW公開の『パイレーツ・オブ・カリビアン』(の3作目)を当て込んでいるようで、ちょっとなぁと思ってしまうし、「メタンハイドレート」云々も昨年公開の『日本沈没』にあやかるようで、これもどうかと思う(その方法論は必ずしも悪いとは思わないが)。 それはさておき、たぶん一番の問題は、中心となる謎の解読(の過程)がアホ過ぎるし(あんな単純な仕組みを何でいままで他の人は解けなかったんだ?)、それで暴き出された“秘密”が思いっきり肩すかし(ネタバレになるので書けませんが)。冴えていない時の(っていつもか)小五郎にも十分に解けるようなものでなかったかな。 そして、(お約束の?)クライマックスの大ピンチも、ドキドキ感なく終わってしまった。 また、冒頭のカーチェイス・シーン自体は面白くはあったが、メインの展開とは結局、何の関係もないのは映画的にいかがなものか。一応、無理矢理つなげていたが、ただのコンビニ強盗をトレジャーハンターたちが仲間にするわけはないだろう。 これも、仲間の一人が海中宮殿探査に必要な“もの”を強奪するが失敗して警察に追われる、そのものが無いためにハンターたちの宝探しがすまく進まない、というような展開にすれば良かったのに。 トレジャーハンターたちの造形がステレオタイプすぎるとか、眠りの小五郎の“活躍”がないとか、あれこれクレームはありすぎるほど。 まぁTVスペシャルなどでの放映であれば目くじら立てることもなかろうが、それなりの料金を取る映画としては、ちょっと厳しいのでは無かろうか。 ということで、ここ2作ほど、一般の人に「名探偵コナン」を薦められないのが、ある意味で悔しいな。 脚本家が悪いのか、監督にも問題があるのか、制作体制が変わってしまったのかわからないが、次回(以降)は、以前のように、「監督:こだま兼嗣、脚本:古内一成」の復活を是非とも望みたいところだ。 一層のこと、『ベイカー街の亡霊』で脚本を野沢尚が書いたように(一部の古参ファンには、世界観が違っていたと顰蹙を買ったようだが、完成度ではピカ一ではなかろうか)、まったく新しいところから脚本家を連れてきてはと思ってみたりもする。 さて、来年はどうなることやら。 『名探偵コナン 紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)』 【製作年】2007年、日本 【配給】東宝 【監督】山本泰一郎 【原作】青山剛昌 【脚本】柏原寛司 【総作画監督】須藤昌朋 【音楽】大野克夫 【声の出演】高山みなみ(江戸川コナン)、山崎和佳奈(毛利蘭)、松井菜桜子(鈴木園子)、神谷明(毛利小五郎)、緒方賢一(阿笠博士)、林原めぐみ(灰原哀)、山口勝平(工藤新一) ほか 映画 公式サイト http://www.conan-movie.jp/ TVアニメ 公式サイト http://www.ytv.co.jp/conan/ 小学館 公式サイト(WEbサンデー) http://www.websunday.net/conan/ こなん通信社(剛昌プロダクション) http://www.conatsu.com/
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