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カテゴリ:日本映画(2007)
黒川芽以、小阪由佳、松尾敏伸、通山愛里ら、旬(に準じる)若手俳優による青春もの。
シネマート六本木にてシネマサービスデーに鑑賞。 『学校の階段』 評価:☆☆☆(黒川芽以の応援の意味で☆一つ追加) 【あらすじ】 両親の海外転勤のため、神庭里見は叔母の家に住むことになり、天栗浜高校へ転校した。通学の初日、里見は廊下で、全力で走ってきた天ヶ崎泉と接触して、彼女に怪我をさせてしまう。泉は、校内を全速力で駆けめぐり競い合う学校非公認「階段部」の部員で、このアクシデントは階段部を敵視する生徒会の仕業であった。 里美の運動能力を見抜いた部員の九重ゆうこは、里見に入部を勧める。始めは拒ばんでいた里美も、部長・刈谷健吾の言葉に心を動かされて「階段部」へ入部。健吾やゆうこ、泉、そして井筒奈美、三枝宗司らメンバーとの活動を通じて、徐々に臆病な自分の心を拓いていく。 ある日、ふとしたことから、階段部の廃部に執念を燃やす生徒会長の中村ちづると、部の存続を賭けて、校内ラリーで対決することになった。実は、ちづると健吾は階段部の創設メンバーだったが、ラリー中に健吾に負わせた怪我が元で、恋人どうしだった二人は別れ、以来、階段部を目の敵にしてきたのだった。 前日には、教頭から不当な圧力が里見にかかる中、階段部の運命を左右するラリーが始まった……。 主演の黒川芽以は、いじめ問題を扱った『問題のない私たち』(2004年)での素晴らしい演技を見て以来、注目してきたつもりだが、どうも出演作には恵まれていないように思う(上記の『問題のない私たち』も都内ではポレポレ東中野だけの公開だったように思う)。 最近の代表作は「ケータイ刑事」になるのだろうが、作品の良し悪しは別にして、彼女の演技力を活かしたものではなかったし、同世代の蒼井優や長澤まさみ、上野樹里らが華々しく活躍するのに比べて、活動が地味すぎる印象は拭えない。 演技力が劣っている訳ではないので(というより優れているか?)、当の本人が一番もどかしく感じているだろうが、こればかりは所属事務所の力というか、“運”に左右される部分が大きいので、何ともならないか。非常にもったいない、というか残念だ(同世代では、大塚ちひろも似たような立場かな)。 少しぽっちゃり系のルックスが、あまり個性的でない(かな)ことも影響しているのだろうか。 その彼女の主演作ということで、『学校の階段』を見てきた(前ふりが長いぞ>自分)。 結論からは、映画自体の展開が中途半端で弾け足りず、この作品では、彼女の魅力を訴えることも、新たな一面を引き出すことも出来なかったようだ。 主人公の成長物語としては、元々の脚本で背景や彼女の性格などの描き込みが足りなさすぎる。 内面描写が、原作の文字表現に比べて難しいのは分かるが、それを“歌”に逃げては、映画化した意味がない。きっちりとエピソードをこしらえて表現するのが、映像のプロだろう(って偉そうかも ^^;)。 あえて歌で勝負するのならば、それこそ全体をミュージカル仕立てにして、最初から最後まで筋を通した方がよいと思う(あと歌うのならば、画面を思い出映像にするのではなく、踊らないとね)。 きちんとした人物像が確立していないから、主人公の黒川が、出ずっぱりでありながらも埋没してしまうことになる。 運命のラリーに里見が選ばれる場面も、単なる消去法以上でしかなく、決意の「もう逃げない」というセリフが空々しく響いてしまう。 役者では、黒川の脇を支える二人、部長役の松尾敏伸や生徒会長役の小阪由佳が頑張ってはいたが、あまり上手くはなかった気がする。 まぁ松尾の方は、そもそもの役柄自体が不安定だから(あの翻意は何?)、下手くそ評価しては可哀想な気はするが。 一方の小阪は、(現時点では)グラビア界のトップアイドル=名女優ではなく、もう少し頑張ってほしいなぁと。舌足らずな話方などは好きなタイプではあるし、ヒステリーの雰囲気は悪くなかったが。数ヶ月くらい、誰か指導力のある舞台監督について演技を磨く覚悟かあれば、大変によい女優になると思うのだが、さて(かつて阿部寛が つかこうへいに師事したように)。 他に、『タイヨウのうた』で主人公の友人役で好演していた通山愛里が、めがねっ娘姿で、これはちょっと萌えました。彼女の主演作品(コメディが似合うかな?)が見てみたいかなぁ。 校長先生役の森本レオは、相変わらず不思議な存在感を釀しだしていたが、脚本・演出的に活かしきれておらず、これももったいない起用だった。 話の後先が逆になったが、原作は櫂末高彰の同名のライトノベル(ファミ通文庫)。アニメ化は別にして、実写映画化されたラノベは少ないので、その意味では貴重?な作品だと思う。 ただ、元ネタが軽い(失礼)のだから、映画ももっと軽妙なコメディタッチに仕上げた方が良かったのではないか(例えば『逆境ナイン』のように、ってそれは極端か)。 真面目にシリアス調にしたために、設定そのものの面白さを殺してしまったような気がする。青春映画としても、画面に若さが弾けていないし、唐突なギャグらしきものは笑うに笑えず、逆効果でしかない。 “真面目”を通すならば、いわゆる負け犬の彼・彼女らが何故走るのかをきちんと描かないと駄目だろう。(細かいところでは、なぜ彼らは制服で走るのかが、鑑賞中ずっと気になった) 何よりも問題は、メインの里見とちづるの競争が盛り上がりに欠けること。 例えば、相撲部が唐突に出てくるのは良しとして、その後のラグビー部は4人登場させて、ボール1個投げるだけとは。ラグビーと言えばやはりタックルでしょう。それもなく、逃げ出してしまうのは何だかなぁ。 “マトリックス避け”がやりたいのであれば、主人公を野球部のキャッチボールに遭遇させればよい。次から次へと飛んでくるボールを、例のポーズでかわしていく、そして、捕手しそこねたボールがゴミ箱をひっくり返し……とすれば、話としては、そのまま繋がっていく。 もっと人工的な障害物を増やすなど、ラリーそのものを興奮する展開に出来なかったのだろうか。ここが映画の生命線なのだから。 また“階段”部と名乗りながら、「下り」は飛び下りてしまうのは、如何なものだろうか。 また「上り」も、(新入の里見を除いて)部員一人ひとりが、何らかの工夫を見い出して、実践に励んでいるべきではないか。(普段の彼らはただ走っているだけなのか?) その他、疑問や突っ込みはあれこれあれど、きりがないので止めておく。 と、辛口の批評を書き連ねてきたが、これも佐々木監督や黒川芽以ほかの役者陣への期待の裏返し(?)。 次作には、大いに期待したいところだ。そして、黒川芽以に良い作品が訪れますように。 『学校の階段』 【製作年】2007年、日本 【配給】アンプラグド 【監督・脚本】佐々木浩久 【原作】櫂末高彰 【撮影】金谷宏二 【音楽】遠藤浩二 【出演】黒川芽以(里見)、小阪由佳(ちづる)、松尾敏伸(健吾)、通山愛里(ゆうこ)、甲斐麻美(泉)、秋山奈々(奈美)、挧原楽人(宗司)、神楽坂恵(階段部顧問の養護教諭)、北村ひとみ(里見の従姉妹:美冬)、滝本ゆに(里見の叔母)、三浦ひとみ(乳母車の主婦)、森本レオ(校長) ほか 公式サイト http://kaidan.gyao.jp/
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