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カテゴリ:外国映画(ヨーロッパ)
「13人によるロシアン・ルーレット」
予告編や事前宣伝のあちこちに記されているので、そう書いてもネタバレにはならないと思うが、クライマックスに集団ロシアン・ルーレットを扱った、フィルム・ノワールorスリラー映画orサスペンス映画の傑作。 2005年ヴェネチア国際映画祭の最優秀新人監督賞や2006年サンダンス映画祭の審査員大賞など数々の賞を受賞している。 東京・渋谷のシネセゾン渋谷にてレイトショー上映を鑑賞。 『13/ザメッティ』 評価:☆☆☆☆ 【あらすじ】 タイトルの「ザメッティ」とは、グルジア語で「13」のこと。と書けばお分かりのように、監督と主演男優はグルジア人だ。 恥ずかしながら、グルジアが旧ソ連でどのあたりに位置するのか、パンフレットを見るまで分からなかった。黒海の東、トルコの北に隣接する、約7万平方キロ(日本の5分の1)の共和国(リンク先は外務省のページ)。 いやー、観客が5人しかいないのが大変にもったいないくらい、凄い映画だった。 モノクロで撮られた端正な映像と、セリフを多用しない演出(主人公はほとんど寡黙だ)は、凄まじいまでの緊迫感で、ぐいぐいと観る者を引っ張っていく。 そして、カメラワークと場面構成は、これが監督のデビュー作とは思えないほど、完成の域に達している。 とくに中心になるロシアン・ルーレットの場面の緊張感・緊迫感は、名作『ディア・ハンター』(マイケル・チミノ監督、1978年)を凌いでいるのではなかろうか。 その場に集った男たちの、ギラギラと光らせた目と、妙に汗ばんだ表情は、パンフレットの解説で山田正紀氏が書いているように、最近の映画では見られなくなったものだ(特攻映画でさえ爽やかに演じられることが多いのだから)。 そんな中、初めてゲームに参加する主人公は、孤独と不安と、そして自分が死ぬことと人を殺すことの二重の恐怖に苛なまれるわけだが、その様子をほとんど目だけで演じたグルジア人男優ギオルギ・バブルアニは、本当に見事だ。素晴らしい。 監督の実の弟の彼は、これが映画初主演だというが、とてもそうは思えないほど、演技に強烈なインパクトがある。 プロフィールによれば、ベルリンの壁の崩壊が彼の5歳の時。少年時代をグルジアの混乱と抗争と死が日常的な環境の中で過ごした体験によるものなのだろうか。 設定上、主人公はそれなりに生き残るだろうなと先がある程度読めてしまったのが一番の難点か。 また、結末がややありきたりなのも残念だが、救いようのない話の中で、ラストの主人公の家族に指す“光”には、少しほっとする。 来年の公開を目標に、ハリウッドでのリメイクが決定しているというが、『インファナル・アフェア』をリメイクした『ディパーテッド』の前例が示すように、明るいギャング映画に堕してしまうのではないかと、心配だ。 ゲラ自身が監督することが条件なのが救いではあるが、現場に様々口を出す(らしい)ハリウッド・プロデューサーを相手に新人監督がどこまでやれるのか、不安は募る。 まぁ、どうなるかわからないリメイクは置いておくとして、本作品は、フィルム・ノワール、サスペンス、スリラー、犯罪映画などに興味・関心のある人は見て損はない映画だと思う。 『13/ザメッティ」』 13 TZAMETI 【製作年】2005年、フランス 【配給】エイペックス・エンタテイメント 【監督・製作・脚本】ゲラ・バブルアニ 【撮影】タリエル・メリアヴァ 【音楽】イースト(トラブルメーカーズ) 【出演】ギオルギ・バブルアニ(セバスチャン:No.13)、オーレリアン・ルコワン(ジャッキー:No.6)、パスカル・ボンガール(ゲームの進行役)、フィリップ・パッソン(屋主:ジャン=フランソワ・ゴドン)、オルガ・ルグラン(ジャン=フランソワの妻:クリスティーヌ・ゴドン)、フレッド・ユリス(No.13の雇い主:アラン)、ディディエ・フェラーリ(刑事) ほか 公式サイト http://www.13movie.jp/
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