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テーマ:中国・香港映画が熱い!(656)
カテゴリ:中国映画(含 香港,台湾)
中国の内モンゴル(蒙古)自治区の草原に暮らす3人の少年と、謎の白い球をめぐる“冒険”譚。
あちこちの宣伝文句に使われている、内モンゴル版『トム・ソーヤーの冒険』(byパンフレット)というのが、確かに一番端的に内容を表しているだろう。といっても、こちらは主人公たちが7歳になる前の話だから、件の小説よりはやや幼いか。 シアター・イメージ・フォーラムにて鑑賞。 『モンゴリアン・ピンポン』 評価:☆☆☆☆☆ 一昨年の東京国際映画祭、昨年のNHKアジア・フィルムフェスティバルで上映されていて、私は昨年すでに鑑賞していたが、素朴な味わいが非常に気にいっていたので、改めて観に行った。 傑作だ。すっきりとした爽やかな感動作だと思う。 こういう作品がひょいと出てくるあたり、中国映画は侮れないと、素直に思う。 話の展開としては、ある意味でドラマチックなことは、ほとんど何も起きない。 ただ穏やかだった日常生活に、たまたま川で拾った謎の白い球が、少年たちにちょっとした波紋を引き起こす様子を、淡々と捉えていく。 「ドラマチックなことは」と書いたが、これはあくまでも大人の視点かな。 子どもにとっては、そもそも未知のものが現れたことでもワクワクの事態だし、途中、3人で遠出して、警官に連れて帰ってもらう場面があるが、自分の家から遠出することも大冒険だろう。 そういう、子どもにとっての“事件”の連続を、きっちりと捉えた脚本と映像は見事だと思う。 でも3人が喧嘩して、父親がピンポンに関してある解決をするのだが、あれって子ども的にはトラウマになるんではなかろうか。まぁ人は、そうやって大人になっていくのだろうけど。 話の展開もさることながら、何と言っても登場人物たちの顔というか表情がすごくいい。 中心となる少年3人は言うに及ばず、主人公の姉や両親、祖母、果ては警官(という名称なのかな)に至るまで、何というか生きているなという“輝き”がある。目が違うとでも言おうか。 ラストの主人公の表情も絶妙だった。 ただ、行商の青年だけは、何となくやる気の無さが全身に漂っていて、表情もそういう感じなのだが、それがまた周囲の人々を引き立たせているので、彼は彼で良かったと思う。 出演者にプロの俳優はいないらしく、全員、監督自ら現地の家々を訪ねてスカウトし、キャスティングしたそうだ。 ちょっとビックリなのは、学校に入る前だから7歳くらいの少年も、普通の馬に乗って駆けていること(3人のうち1人はスクーターだったりするけど)。 モンゴル(モンゴル国と中華人民共和国の内モンゴル自治区)を舞台にした映画が公開されると、できるだけ見に行くようにしているが、それは広い緑の草原と青い空が好きで、それをじっくりと味わいたいから。その昔、NHK番組『シルクロード ~絲綢之路~』もモンゴル編は夢中になってみたものだった 今年公開された『蒼き狼 地果て海尽きるまで』も、話的・映画的には全然であったが、モンゴルを写し撮っているという1点で評価してたりする。 もっともモンゴルを舞台にした映画といっても、公開される作品そのものが少なかったりはする。すぐに思い浮かぶのは『プージェー』『天空の草原のナンサ』『らくだの涙』かな。 いま公開中のモニカ・ベルッチ主演『ストーン・カウンシル』も、モンゴル人の養子が誘拐された主人公がモンゴルに息子を捜しに行くもの、らしいので、ちょっと楽しみ。 何人かの方のブログを拝見していて、背後に中国の国家と民族問題(子どもたちは確かに北京を目指すし、冒頭、一家でとる記念写真の背景は天安門だったりする)なども折り込まれているようだが、中国に詳しくない私の手に余る話題なので、そういうことがあるということだけ記しておく。 ブログに書くのがすっかり遅くなってしまったので、東京ではすでに公開は終わってしまったが(すみません)、大阪ではシネマート心斎橋で7月7日からモーニングショーにて公開される予定。 今年公開された必見作の一つ。絶対のお薦めです。 【あらすじ】(公式サイトより転載) モンゴルの雄大な自然の中に家族と暮らす少年ビリグ。この土地にはまだ電気も水道もひかれていないが、やんちゃ盛りのビリグや同じ年頃の友達エルグォートゥとダワーにとっては、馬に乗って駆け回る大草原全体が遊び場だ。 ある日、ビリグが川の水を汲みに行くと、上流から小さな白いピンポン球が流れてきた。しかし、卓球を知らない少年たちは謎の物体に興味津々。ビリグのおばあちゃんは、それは川の上流に住むという精霊の宝物「光る真珠」だという。しかし、夜じゅう待ってみても球は光らない。物知りのラマ僧たちにきいても、誰も知っている人はいなかった。 そんなあるとき、ダワーの父親がテレビを買った。大草原に手作りのアンテナを立てて奮闘するが、なかなか映像が映らない。しかし少年たちは偶然テレビから聞こえてきた雑音まじりの音声から、あの白い球は「卓球」というスポーツに使われるボールらしい、ということを知る。さらにアナウンサーが続けて言う。「ご存知のように卓球は我々の国技、このボールは我が国家の球なのです。」 これを聞いた3人はびっくり。「卓球」がどんなスポーツかはわからないけれど、そんなに大事な球がなくなって「国家」は困っているに違いない、「国家」のある北京まで球を返しにいこう、と思い立つ。馬とスクーターで北京を目指した3人。しかし、大草原は彼らの想像をこえてどこまでも広がっていた・・・ さあ、はたして少年たちは白い球の正体を探し当てることができるのだろうか? 『モンゴリアン・ピンポン』 緑草地 Mongolian Ping Pons 【製作年】2005年、中国(内モンゴル) 【製作】ル・ビン、ヘ・ブ 【配給】ダゲレオ出版、イメージフォーラム・フィルム・シリーズ 【監督】ニン・ハオ 寧浩 【脚本】シウ・エナ、ガオ・ジェングオ、ニン・ハオ 【撮影】ドゥ・ジエ 【音楽】フー・ヘー 【出演】フルツァビリゲ(ビリグ)、ダワー(ダワー)、ゲリバン(エルグォートゥ)、ユーデンノリブ(ビリグの父)、バデマ(ビリグの母)、ウリン(ビリグの姉:オルナー)、デゥゲマ(ビリグの祖母)、ジン・ラオウ(都会の品を売りに来る青年:セレグレン)、ブヘビリゲ(ダワーの父)、サランゴォ(ダワーの母) ほか 公式サイト http://www.imageforum.co.jp/pingpong/
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最終更新日
2007.06.14 17:04:22
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