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カテゴリ:外国映画(アメリカ)
ペルシア軍100万人 対 スパルタ兵300人という、荒唐無稽としかいいようがないテルモピュライの戦い――ヘロドトスの「歴史」にも記されているという、紀元前480年のこの戦いを、『シン・シティ』のフランク・ミラー原作・製作総指揮で送る、斬新かつ鮮烈な映像で描きだした歴史アクション映画の傑作。
ワーナー・マイカル・シネマズ板橋のレイトショーにて鑑賞。 『300〈スリーハンドレッド〉』 評価:☆☆☆☆☆ いやはや何とも物凄い作品だ。 スタイリッシュというのか、ハードボイルドな一大スペクタルというのか、ダークな美しさに溢れているというのか、いろいろな形容を付けてみても、到底、映画の本質を表しきることはできないだろう。 それだけのパワーと迫力、そして映像美をもった作品だ。 とはいえ、鑑賞者の好みを如実に反映する映画でもあろう。 映画に重厚な人間ドラマを求める向きには、まったくお薦めできない。本作にドラマらしいドラマはないからだ(なので評論家受けも極めて悪い?)。 例えば、ラスト近く裏切り者に対面したシーンでも、主人公は「後悔するな」と声をかけるだけだし、王に応援を送りたいとする王妃をめぐって多少のあれこれがあるが、ステレオタイプな展開でしかない。 後者では、子供―王の息子をからめて、ドラマ作りすることも可能であったと思うが、製作者たちの思惑・興味は、そういう、如何にもな人間ドラマにはまったく無いようだ。 そもそも、なぜ屈服・服従せずに、戦い・死を選択するのか、その辺りも非常に漠然としている。「自由のため」「神秘主義・専制主義に抗する」などのセリフは聞かれるが、きちんと話として描いている訳ではない。 (さらに言えば、スパルタ自体、奴隷制度をしいた軍事国家な訳で、「自由のため」という言葉が空々しく響く) あるのは、徹底した人間と人間との戦い――肉体の限りを尽した男たちのバトルだけだ(戦闘にサイやゾウも出てくるが、呆気なく退場してしまう)。 それを画期的かつ斬新な映像で表現する。 したがって、いわゆるアクション映画に興味・関心のない人には、何だこれ、と一刀両断されてしまうだろう。 まぁ所詮は見る人の好みの問題かなとは思うが。 それにしてもこの作品、見ている間、といより見終わった後で、黒澤明監督の『七人の侍』や『蜘蛛巣城』を彷彿とさせる場面がたくさんあったことに気付く。 スパルタの王レオニダス(英語的発音としてはレオナイダス)が戦いの戦略を土の上に描くところとか、人数の不利を補うために狭いホットゲートに導こうとするところとか、無数の矢が突き刺さるシーンとか。 そう思ったのは私だけではないようで、パンフレットにも書かれていた。 そういう意味では、人間ドラマのない黒澤映画を、過去に例のない(少ない)画期的な手法でみせる作品、ということになろうか。 なお、テルモピュライの戦いを描いた映画として、1961年製作のルドルフ・マテ監督『スパルタ総攻撃』がある。 描かれ方がいかにも1960年代という感じではあるが、空前の大規模エキストラによる映像は、一見の価値があると思う。本作と比較しながら見るのも一興かもしれない。 劇場予告編を見ても何も感じなかった人は、わざわざ見なくてもよいかもしれないが、予告編で何らかの引っ掛かりを覚えた人には、是非とも劇場の大スクリーンと大音響で体験することをお薦めしたい。 『300〈スリーハンドレッド〉』 300 【製作年】2007年、アメリカ 【配給】ワーナー・ブラザーズ映画 【原作・製作総指揮】フランク・ミラー 【原作】リン・バーリー 【監督・脚本】ザック・スナイダー 【脚本】カート・ジョンスタッド、マイケル・B・ゴードン 【撮影】ラリー・フォン 【音楽】タイラー・ベイツ 【出演】ジェラルド・バトラー(スパルタ王レオニダス)、レナ・ヘディー(王妃ゴルゴ)、ロドリゴ・サントロ(ペルシア王クセルクセス)、デイビッド・ウェナム(語り手、片目のディリオス)、ドミニク・ウェスト(政治家セロン)、ビンセント・リーガン(隊長) ほか 公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/300/
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