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テーマ:今日の出来事(291769)
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今日、21歳の未来ある命が消えた。
以前も確かこの患者について日記を書いたことがある。 『退院っていいな』だったかな。 今から2ヶ月ほど前、彼女は高熱と吐き気で再入院してきた。 骨髄検査の結果は『再発』。 彼女が恐れていた結果だった。 彼女に残された治療法は骨髄移植しかなかったが、 もう時間はあまり残されていなかった。 骨髄バンクに登録してあったため照会してみると14人のドナーがHITしたが バンクから患者に骨髄を移植するまでに短くても2ヶ月以上を必要とする。 ドナーに問題があった場合はさらに長い時間を有するのだ。 そこで彼女の治療法に名乗りをあげたのは 臍帯血移植だった。 臍帯血移植なら1ヶ月待てば準備ができる。 着々とその準備は進められ、今月21日に移植予定となっていた。 しかし、彼女の病気は待ってくれなかった。 彼女の骨髄にある白血病細胞は止め処もなく増殖し、脳を包む髄液にまで浸潤していった。 激しい頭痛と高熱、吐き気と闘い、昨日は視力さえも失った。 それでも彼女は移植の日を待ち続け、希望を失わなかった。 だけど、神様も病気から彼女を救うことができなかった。 今日、午後には呼吸状態が悪化し、その細い喉には気管内チューブが差し込まれたが 血小板の激減している今の状態では少しの傷も大出血を招く。 脳幹部への腫瘍の浸潤による呼吸障害も抑えきれず、 午後6時半 彼女の明るい未来は途切れた。 わたしは研修から戻って病院に駆けつけたが間に合わなかった。 目の前の彼女は血まみれだったが、わたしの頭の中には大学の卒業写真を嬉しそうに見せてくれた彼女の表情ばかりが浮かんできた。 化学療法とは何なのだろう。 彼女の時間をあんなにたくさん費やしても結局 未来を作ることさえできなかった。 今は 考えても考えてもこの仕事の良さが思いつかない。 ただ、彼女の冥福を祈るのみである。 合掌 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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