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テーマ:仕事しごとシゴト(23633)
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自分の命があと100日・・・と言われたらどうするだろう…。
そんなことを考えてみた。 入院中の患者に担当医師が予後告知とも言える病状説明をした。 患者である彼は、以前も確かおかしな夫婦関係で日記にとりあげたことのあるその人だ。 妻と愛人と患者の三角関係だがなぜか共存できている不思議な人間関係の中で暮らしている。それは今も変わらない。 この彼に主治医はこう話した。 『抗がん剤の治療を今まで続けてきましたが、この間のCTで見たところ、腫瘍は小さくなるどころかさらに大きくなっています。これは抗がん剤が効かないということです。』 『…と言うと?』 彼は身体を前へ乗り出して訊ねた。 『移植を目標にやってきましたが、血液中の悪い細胞がやっつけられないので移植をしてもその悪い細胞に良い幹細胞栄養を与えるようなものです。さらに増殖することが考えられます。つまりあなたの病状は移植の適応ではないということです。』 彼には今まで包み隠さず病状の変化を告げてきた。 おそらく病状が悪化しつつあることも自分の身体の変化で気付いていたのだろう。 『移植をしなかったらどうなるんでしょうか』 医師は躊躇せずに続けた。 『保存的療法、または対症療法として、症状がでてきたら抗がん剤を入れる、または痛み止めを使って抑える…ということしかありません。』 彼は少し考えてから 『抗がん剤だけでこのままいけば余命はあとどのくらいですか』と訊ねた。 『今までの経過を考え20日周期で抗がん剤を入れていったとして、骨髄の状態は今までどおり衰えていくとしたら5回治療ができたらいいほうでしょう。しかし、人間の身体は思うようにいかないときもあるし、奇跡がおこることもある。一概にどれくらいとは言えません』 『100日…ということですね。』 彼は大きく溜息をついた。 彼は企業家である。 一代で自分の会社を大きくし、一か八かでやってきた人だ。 『先生、万が一 移植が成功したらまだ生きられるということですね』 万が一!? あり得ない。 移植をするためには命を落とす寸前までの極量の抗がん剤を使用するのだ。 今の彼の体力と骨髄機能では抗がん剤に勝てるわけがない。 わたしは思わず途中で口を挟みそうになったがググッとこらえて話を聞いていた。 その場には例の三角関係の3人と医師とわたしがいた。なんと重苦しい空気だったことか…。 愛人は言った。 『先生、この人の言うようにお願いします。』 ところが妻は 『この人(夫)はいつもそうです。何でも自分のことしか考えない! 家族は一日でも長く生きていて欲しいのに…。移植をしたらもっと早くダメかも知れないんでしょう!?』 当の本人は 『先生、移植をする方向で治療をすすめて下さい』 このあとわたしと医師はしばらく黙ったままだった。 なんでいつもこうなんだ…。早くこの関係をなんとかしろよ…。 心の中では二人ともがそう言っていたのだ。 しばらくしてようやく口を開いた医師が言ったことは 『あなたの残された時間を大切に使えると思うほうを選択してください。僕はあなたの命を左右することはできない』 あぁ…ようするに 家庭事情をなんとかしてから治療法を決めろってことか…。 この会話に参加しながらわたしは考えた。 わたしならどうしただろう。 一か八かの博打に出るか、現状を守りながら細く短く残された人生を生きるか。 …きっとその時にならないとこの答えはでないんだろう。 わたしが今迷うとしたら チキンライスにするかオムライスにするかくらいのものしかないからだ。 それでもお腹がすいていたらオムライスだろうし、安けりゃチキンライスを選ぶくらいの考えしかない。 あと100日。 そう言いながらすでにそれから15日は経過しただろう。 結果、彼は移植のための準備を着々とすすめているのだが、家庭事情は変わっていない。 ただ、変わったとしたならば、彼が自分の会社の整理を始めたことだ。 おそらく彼の移植はうまくいかない。 担当医師がまだ彼に言っていないことが一つある。 移植をしてその後生存できたとしても3ヶ月に満たないだろう…ということだ。 つまり、成功しても190日。 運命は残酷である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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