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 みみん@ Re:抗がん剤で癌になる方法(10/27) 癌って、抗がん剤以外でもなれるんですか…
Oct 10, 2006
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この仕事をしていると、本当の自分の気持ちというものがわからなくなる。

看護師はすべて『いい人』でもないし、『天使』でもない。

ここ最近はそんなことを考えることが多くなった。

多発性骨髄腫。これは骨のがんとも言える恐ろしい病気である。
整形外科的な治療を要するようになるのは骨折などをおこした後で、
まずは抗がん剤を使って骨髄機能を良くする治療をする血液内科の病気だ。
もちろん、うちの病棟にも何人か患者さんを抱えているのだが、
今現在わが病棟には、この病気でほぼ寝たきりになっている患者は一人しかいない。

この一人が最近の問題患者である。

彼はまだ44歳という若さで、しかも独身貴族でもある。
今までバリバリ仕事をこなし、自分の時間をうまく使って焼肉を食べるためだけに韓国に日帰りで行ったり、とんこつラーメンを食べるためだけに九州まで行ってその足で帰ってきたりした。
活動的であり、その勢いで仕事をしていたものだからかなりやり手でもあった。

彼は2年ほど前から骨髄腫の治療を始めたのだが、状態は決しておもわしくなかった。
今回の入院に至ってはほとんど食事を摂れず、骨髄機能の低下もあり貧血がひどくなっていた。
彼がふらついたり、足の力が弱くなったのは貧血のせいで寝て過ごすことが多くなって
下肢の筋力が落ちたためだと誰しもが考えていた。

ところがある朝突然、彼は立てなくなった。
ナースが支えても腰すら上がらない。
その日の夕方、彼の病室を訪問したとき、ふと尿のにおいがした。
傍らに設置した尿器には排尿しておらず、まさかと思いつつ布団の中に手を入れてみると
彼は失禁していた。
すでに足の感覚はなく、腰から下の麻痺が起こっていたのだ。
すぐにMRIを撮ってみた。結果は脊椎への転移による骨折だった。
脊椎損傷。これは彼の社会生活において致命的だ。
もう自分の足で立ち上がることはできない。

しかし、彼は足の感覚がないことについてわたしたちに理由を尋ねることをしようとしなかった。
『MRIの結果、聞いてみる?』
そうわたしたちがさりげなく真実を伝える時間を作ろうとしても
彼は『いや、結果が悪かったら先生のほうから話してくるだろう?』
そう言って知ろうとしなかった。
おそらく彼自身も怖かったのだ。
自分の想像していることが本当になることが…。

それと同じようにわたしたちも怖かった。
本当のことを知ってしまうことで 彼が壊れてしまうんじゃないかと思ったからだ。
両親も早くに亡くし、兄弟もいない。
たった一人で今までがむしゃらに仕事をしてきて、多くの部下を持つ彼から仕事というものを取り上げ、自由を奪ったならば、このあとどうするんだろう。

このことはチームカンファレンスでも充分話し合い、主治医にも相談した。
主治医は言った。
『そうだね、彼の足はもう動くことはない。化学療法(抗がん剤)も効かなかった。おそらくもう残された時間はそう多くはないと思う。そんな彼に“あなたの足はもう動かなくなりました、死ぬまで寝たきりになります”というべきなのかな。』
『・・・・・・』
このとき答えられなかったのは『もし宣告されるのが自分だったら…』と考えていたからだ。
悪い知らせは誰しも聞きたくはない。
しかし、知って残された時間をどうにかして自分のために使いたいとも思う。

そんなふうに誤魔化し誤魔化し数日が過ぎたある夜、彼が言った。
『先生は…看護師さんたちにどう言ってる?』あぁ…ついに来た…。
『MRIの結果、聞きますか?』前回と同じ質問を彼に投げかけたとき
彼は少しだけわたしの顔を見てすぐに顔をそむけたが確かに
『うん』と頷いた。

翌日の朝早く主治医は彼にMRIの画像を見せながら病状を説明した。
ただ言わなかったことは予後が残り少ないということだけだ。
病状を聞いたばかりの彼は『そうですか…』と返事はしたものの
まだ現実を直視していなかったのかもしれない。
そして日が経つにつれ 彼の態度は豹変した。

『看護師さん。ここから出て行かないで。俺、自殺するかもしれないから。』とか
『ず~~っとこのままなんだろ!!!ずっと死ぬまで!!
そんなふうな言葉が彼の口から聞かれるようになった。

しかしわたしたちにできることは受けとめることしかできない。
『そうだね、つらいね。』
そんな返事をしたところで所詮、五体満足で健康な人間の言うことなど
気休めでしかない。

何度も何度もナースコールを押して わたしたちは用事もないのに呼び出される。
なんとか出て行こうとすると『放っておいたらそれでいいのか!!』と大声をだす。
他の患者も呼んでいるから…と言うと『俺はどうでもいいのか!!』と言う。

怒ってはいけない、患者なんだから。
これは宣告された患者の正常な反応なんだ…。
そう言い聞かせ、『あと5分待ってください。また来ます』と部屋を出るが
心の中は 『もう逃げたい』と思う。
主治医は『精神科を受診させて少し眠らせよう』と言う。
わたしたちもそのほうが楽ではある。
しかし、彼の残された時間を考えると、眠ったまま時間が過ぎるよりも
もっと大切に時間を使ってほしいのだ。
その気持ちと、『いいかげんにして欲しい。もうずっと寝てたらわたしたちの仕事もすすむのに』
そう思う気持ちもある。

彼の足が動かなくなったのはわたしたちのせいじゃないのに どうしてこんなにわたしたちが辛い思いをしなければならないのか…。
でも彼のクオリティオブライフを大切にするべく出来るだけのことをわたしたちがするべきじゃないのか…。

心の中の葛藤は続く。

『彼のため』とはいったいどういうことなのか。
わたしが看護師という仕事じゃなければ こんな人の言うことを効かなくてすむ。
『勝手にすれば!?わたしはあなたの家族でもないし、あなたの側にいる義務もない』
そう言えればどんなに楽だろう。
しかし白衣を着て彼の側に立つわたしは 彼の要求をかなえてあげられる数少ない人間の一人なのだ。

わたしは今から彼のいる病院に準夜勤務に向かう。
イラッとする気持ちを抑えるのに必死になるだろう。
でも仕事が終わればわたしは彼から逃げられる。
しかし、彼はその病状から逃げることは出来ない。
彼自身も受けとめるしかないのだ。

彼と代わってあげることはできないのだ。
わたしは家に帰ったら精一杯悪態つけばいい。
病院にいるほんの9時間、彼を受けとめていればすむ。

白衣を着ているときだけ天使に化ければいい。
サービスなんだ。ビジネスなんだ。
言い聞かせながら仕事をしよう。

天使に化けるまであと1時間。
天使に化けきれず爆発しないことをキモに命じるのだ。
喝!!!! よし!行こう!!







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最終更新日  Oct 10, 2006 03:21:41 PM
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