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テーマ:仕事しごとシゴト(23633)
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わたしの仕事上、抗がん剤を扱うことは避けられない。 患者さんたちにとっては 苦しいながらも抗がん剤は癌に打ち勝つためのひとつの手段である。 しかし、クスリというものは利点があれば欠点もあるというのが常識である。 抗がん剤の場合、欠点はどこにあるのか。 使用する患者さんにとっては命の綱でもあり、副作用は当然つきものではあるが使用できることは利点である。 ところが、抗がん剤には周囲に及ぼす危険があることはそう公にはなっていない。 抗がん剤を使っている患者さんと偶然同じ部屋に入院した癌ではない患者さんの尿中から 発がん性物質が検出されることは珍しくはない。 そして、抗がん剤を扱うナースやDr.の体内からも発がん性物質が検出されている。 研究によると、化学療法を頻繁に行うナースのほとんどが抗がん剤に汚染されているということが立証されているのだ。 シクロフォスファミド(以下CP)は血液内科や消化器内科、小児科などでも多く使われる抗がん剤のひとつなのだが、これは空気中に揮発することによって吸入したり、皮膚につくことによって皮膚から吸収される恐ろしい抗がん剤である。 このクスリを点滴で受けている人の側だけが危険なのではなく、調剤された点滴を持ち歩く通路、この患者さんの排泄物のある場所、廊下、室内、点滴台、そしてそれらを扱うナースの手が触れる電話機、ナースステーションの冷蔵庫の扉…いたるところにCPがばら撒かれているといっても過言ではない。 こういうところで長期にわたって妊娠中のナースが仕事をしていたらどうなるか…。 もちろん、知らず知らずに抗がん剤の曝露を受け続けていることになり、 胎児にも影響があると報告されている。 患者の面会人はそのクスリに曝露されたまま自宅に持ち帰り、家中に抗がん剤を撒き散らすことになりかねない。 ここでキチンと書いておかなければならないことは、このクスリに限らず抗がん剤は少なからずどのクスリでもこのような影響があること、そして24時間~48時間で尿中に排泄されることである。 だから、まったく身体に残ったままにはならないということだ。 ただ、成人の場合はそれでもいい。小児の場合はどうだろうか。 小さい子供を連れて面会にやってきた場合、子供は床に寝転んだり、あちらこちらを触ったりすることが多い。 これを見過ごしてはならない。 必ず病院に面会に行ったあと、受診に行ったあとは手洗い、うがいをさせること。 まずはこの作業だけで少しは難を逃れられる手段となる。 わたしたちの病棟の研究グループはこの『抗がん剤の曝露』の研究を今すすめている。 前述したCPは曝露の段階では1級であり、アスベストと同格である。 つまりアスベストを振りまいた状況下で仕事をしているのと同じことなのだ。 使用している段階では何も起こらなくても、長年積み重ねることによって影響が出る。 これはまだ検証の段階ではないのだが、当病棟で全く抗がん剤を扱わない看護助手が原因不明の喘息発作を起こしている。 看護助手は約7年うちの病棟に勤務しており、薬品を薬剤部から運搬し、病棟で揮発した抗がん剤を吸入し続けていることになる。 今回の研究ではこの看護助手の尿検査をすることで代謝されずに残るCPの値を検出してみることが今後のわたしたちの身体を守る第一歩になるような気がする。 もちろん、実際にクスリを扱っているわたしたちも同様に尿検査をうけることになる。 この結果は全国学会に発表することになるのだが、結果次第では看護学会はちょっとした騒ぎになるかもしれない。 癌じゃない人も知らずに受けるがん治療。 百害あって一利なしとはこのことだ。 つまり、癌になりたい人は 毎日抗がん剤を受けている人の側でクスリの入ったボトルを触り続け、床を這いまわればいいということだ。 どこかで癌の種を拾えることは間違いない。 癌になりたくない人は、抗がん剤の治療を受けた人の面会に行く際にはマスクをしよう。 病院の手すりには触れない。床には手をつかない。トイレの排水レバーにはじかに手を触れない。 病室の入り口によくあるアルコールジェルを手に刷り込んだ位じゃ何も変わらない。 あれは細菌の働きを弱くするだけで 抗がん剤は拭い去ることはできない。 病院を出たら流水下で手洗いをしよう。 これは癌の患者さんに対する偏見でもなんでもない。 薬剤に対する偏見でもない。 このたいへんな薬剤を身体に取り込んで治療に耐えている患者さんへの敬意と 自己防衛の気持ちを行動で示すことが何よりも大切なのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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