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テーマ:仕事しごとシゴト(23633)
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この間、天国に行ってきた患者の話を聞いた。 この患者は 一日のほとんどを意識が朦朧としたまま過ごしている。 しかし なぜか2日に一度くらい日中意識を取り戻すことがある。 その日も久々に彼の声を聞くことができた。 『あれ、目が覚めてるじゃない』と声をかけると、意外にしっかりした口調で 『ただいま』と言う。 『今日は3回天国に行ってきたよ』 『・・・そう、キレイだった?』と訊きながらわたしは 意識が朦朧としてるから夢でも見てたのかな…と思っていた。 ところが、彼はこう続けた。 『天国に立ってたら、後ろから“じいじ(おじいちゃん)戻って”って聞こえたんだよ。後ろを見たらサンタみたいな服を着た子供と頭がトゲトゲの子供がいるんだ。孫たちに似てて顔を見に近づいたら目が覚めてここ(ベッド)に寝てたんだ…』 『ふ~ん、サンタと頭がトゲトゲの子供?』 わたしが不思議そうに訊ねると彼の妻が目を丸くして言った。 『それ、ほんと!?』 妻もその話は初めて聞いたらしかった。 なぜそんなに驚いたのか…それには理由があったのだ。 彼は孫たちと遠く離れて住んでおり、彼が今回病状が悪くなってからは連絡をとっていない。 しかし、妻は知っていた。 彼の孫たちが今年の保育園のクリスマス会で、下の子は『あわてんぼうのサンタクロース』を合唱するためにサンタの衣装を作って練習していること、上の子は『ドラゴンボール』の帽子を作ってお遊戯の練習をしていたことを…。 確かにサンタの衣装とトゲトゲの頭だ…。 わたしはその瞬間の鳥肌が立つような気持ちを忘れることができない。 そして彼は天井を見つめたまま話を続けた。 『あたたかくてね…、ずっとそこにいたかったんだ。どこも痛くないし身体が楽なんだ…。足元にはたくさんの人が寝てるんだ。誰も話してないのにその人たちがどこの誰で何で死んだかわかるんだよ。』 『それであなたは立ってた?』恐る恐るいろんな質問をしてみた。 『他にも立ってる人がたくさんいたよ。みんな遠くを見てた。』 『知ってる人はいた?』 『芸能人がいた。』 『へぇ誰がいた?』 『みのもんた』 ここで少しわたしはホッとした。なぜならみのもんたはあんなに元気にTVに出演しているからだ。 …やっぱり夢か… 『みのもんたはどうしてそこにいたの?』 『あいつ、バカだよ。あんなに稼いでるけど肺ガンなんだよ』 『ええぇ~~~~』 ここだけの話、これがホントならビックリだ。 しかし彼が話したのはこれだけではない。 『さっきトイレに行こうとして歩いていったら死んだ人の匂いがしたんだよ。』 これはこの時点では『この人は歩けないんだからそりゃないよ』と思っていたが 翌朝、出勤したらトイレの向かい側の部屋の患者が前日の夜、つまり彼からその話を聞いた日の夜に亡くなっていた。 う~~~ん、これは!? ちょっとビビらないでもない。 ただ、ひとつ笑えるのは彼が付け加えた一言だ。 『Gメン75の頃の丹波哲郎がいた』 『丹波哲郎!?』大霊界かよ。 しかもGメン75知ってる人も少ないよなぁ。 タイムリーに見てたわたしは分かりすぎて少し笑ってしまった。 お花畑・小川・悩みも苦しみも痛みもない世界。 会話がなくてもすべて分かり合える世界。 死ぬのもそう怖くないな…なんて思ったりした。 今日も彼は昏々と眠り続けている。 今度はどんな話をきかせてくれるだろうか。 それともこんどこそ小川の向こう側へ行ってしまうのだろうか…。 そんなことを考えながらみのもんたの行く末を気にしている自分がいる…。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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