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カテゴリ:アメリカTV事情
アメリカ版料理の鉄人が明日からアメリカで始まる。 アメリカでも「料理の鉄人」は"Iron Chef"のタイトルで ケーブルテレビ局Food Networkで放送されており、 カルト的人気を誇っている。 (俳優James Spaderもお気に入り。) これまでは日本のフジテレビで放送されたエピソードを こちらで英語に吹き替えて放送されていた。 しかし、本国日本での放送が終了し、 新しいエピソードが供給されなくなった。 Food NetworkにとってもIron Chefは人気の高い稼ぎ頭の一つで このまま終わらせてしまってはもったいない。 とりあえずは古いエピソードの再放送でファンを繋ぎとめておいた。 その間にFood Networkは自前でアメリカ版料理の鉄人を作ることにした。 ところが、既に大成功を収め、こんなに人気がある番組なのに、 そのアメリカ版制作においてFood Networkは非常に慎重な態度を見せた。 まずは昨年四月に試しにパイロット版(全4話のスペシャル版)を作って放送し、 視聴者の反応を見たのである。 私はてっきりこのパイロット版に続いて すぐ正式にシリーズが放送されるものだと思っていた。 ところが、放送終了とほぼ同時に このスペシャルパイロット版のDVDが発売された。 「あれ?もしかして、スペシャルだけで終わり?」 「もしかしたら、失敗だったのかな。」 「やっぱりボビー・フレイじゃダメだったかな。」 (ボビー・フレイ(Bobby Flay)は ニューヨーク5番街に自分のレストランを持つ有名シェフで、 Food Networkでも自分の番組をいくつか持っている。 私はボビー・フレイが大嫌い。このことについては後日改めて触れることにしよう。) 視聴者の評判が思ったほど良くなくて、 とりあえず、大金をつぎ込んで作ったスペシャルだから 話題がホットなうちにDVDを発売して 元は取れるだけ取っておこうという魂胆なのかもと思った。 そしてそのままIron Chef Americaに関してはずっと全く音沙汰が無かった。 それが、昨年の10月頃からFood Networkで新番組Iron Chef America The Seriesの宣伝がバンバン流されるようになった。 「ああ、結局はシリーズ化にGOサインが出たんだな。よかったね。」 しかし、なぜFood Networkはこれほどまでに慎重な姿勢を取ったのか? 実は料理の鉄人のアメリカ版はFood Networkが作る前に既に一度作られていたのだ! 実はネットワーク局のUPNが2001年に、 初代スタートレック船長役(しかない)ウィリアム・シャトナーを司会に "Iron Chef USA"という番組を作って放送していた。 しかし、プロレスの試合かと思うような あまりにアメリカ的なショーアップされすぎた派手な演出で、 (挑戦者がバイクに乗ってキッチンスタジアムに登場したりする) オリジナルの日本の「料理の鉄人」の持つストイックな緊張感がなくなってしまったせいか、視聴者からもすこぶる不評で、たった一話きりで姿を消した。 私は多分、再放送されたのを見たことがあると思う。 ウィリアム・シャトナーが司会でIron Chefをやっていたのを見た記憶がある。 しかし、あまりにもヒドい番組だったので記憶から抹消されていて、 今、これを書くまですっかり忘れていた。 番組の細かい内容は相変わらず思い出せないが、 番組を見終わった後、一緒に見ていた友人と (あまりのヒドさに)思わず顔を見合わせてしまったのを覚えている。 UPNのIron Chef USAが大失敗したために Food Networkはこれほどまでに慎重な態度を取ったのだろう。 日本で例えればテレ東とは言え、腐ってもネットワーク局のUPNと 一ケーブルテレビ局でしかないFood Networkでは企業体力が違う。 キッチンスタジアムを一から作って、 高級食材をふんだんに取り揃えるのにかかる費用は、 安上がりなクッキングショウやグルメ番組が主流のFood Networkにとっては 大きなリスクを伴うものだったのだろう。 成功するかどうかわからないうちからシリーズ化の準備をするのは危険すぎる。 従ってパイロット版放送時にはシリーズ化の準備はまだされていなかったのではないだろうか。 昨年4月の放送後、反応を見てシリーズ化にGOサインを出し、 そこから新シリーズの制作に取りかかったために こんなに時間が開いてしまったのだろう。 今回のシリーズも今のところ10回分しか作られていない。 これで視聴率が取れたらセカンド・シーズンもあるだろう。 なにしろ、私、昨年春に放送されたスペシャル版、 見終わって非常に腹が立ったのである。 日本から来たアイアン・シェフ・森本とアイアン・シェフ・坂井は アメリカ人シェフとの対決にことごとく破れ、全敗だったのだ。 しかも結構大差で。 そんなはずはない! 全てが大味なこの国で、こんなに味覚音痴なアメリカ人に 日本の料理が劣っているだなんて言われたくない! もうそれはまさに屈辱というか、もはやinsultとすら感じたのだ。 ジャッジはみんな、そこそこテレビに出ているとはいえ、日本食なんて中国人経営のえせ日本食レストランでしか食べたこと無いっていうような二流三流タレントばかり。 寿司なんてメキシコからの不法移民が握ったものしか食べたこと無いんじゃないのって感じだ。 まあ、日本版でも高田万由子やら斉藤慶子やらがジャッジとして出ていたから、 それを忠実に再現しているといえばそうかもしれないが。 とにかく最初からアメリカNo.1というシナリオのもとに アメリカ勢が勝つことが決まっていた、 もしくはそう仕向けられていたのではないかとすら感じたのだ。 新番組の初っ端だからアメリカ人視聴者に受けるために アメリカが何でも世界で一番というところを見せようとして、 日本から来た鉄人達にはわざと負けてもらうように言ってあるのではないか? 後半にモリモトがふと見せた諦めたようなやる気の無い態度から そう勘ぐってしまった。 今回のシリーズ、昨年放送のスペシャル版から どこがどういう風に改善されているのか しっかり見極めたいと思う。 Iron Chef America The Seriesは明日16日(日)の午後9時(ET/PT)から。 その前にプレミアで一時間の紹介番組がある。 オフィシャルサイトはこちら。 (勝手にビデオが始まっちゃうので、仕事中に見ている人は要注意!) おまけとして、私が昨年のスペシャル放送時に書いた closedなメルマガをここに掲載しよう。 (おまけ) 「おまえらに和食の良さがわかるかい!」 「料理の鉄人」がアメリカでも人気だ。 こちらでは「アイアン・シェフ」(Iron Chef)というタイトルで ケーブルテレビ局フード・ネットワークで放映されている。 実は俺は日本にいるときには料理の鉄人はあまり見たことが無い。 よく見るようになったのはアメリカに来てからだ。 なんか、料理中継のあのまくし立てて話すスピード感は英語版の方がより出ているような気がする。 英語版制作スタッフは良くやっているなと思う。 日本の食材の英語名を調べるのはもちろん、 アメリカで馴染みがない食材の場合はちゃんと解説もつけている。 (たまに手抜きをしたのか調べれば英語名がわかりそうな食材を そのまま日本語名で呼んでる時もあるけど。) で、オリジナルの日本版が終わってしまったので、 アメリカでIron Chef Americaっていうのを作って、こないだ立て続けに放送した。 日本から鉄人坂井ヒロユキと森本マサハルを呼んできて、 アメリカのアイアン・シェフ三人 (ボビー・フレイ、マリオ・バタリ、ウルフガング・パック)と対決させた。 中華の鉄人、陳健一が都合が悪くて来れなかったらしく、 坂井vs.フレイ、森本vs.バタリ、森本vs.パックの三試合をしたわけだが、 これが日本勢三連敗! 何かすごいショック。 アメリカに住んでる日本人なら全員わかると思うけど、アメリカの食べ物はとにかくまずい! アメリカのちょっと名の知れた高級レストランよりも日本のそこら辺の定食屋の料理の方がおいしかったりする。 「食べ物は絶対日本の方がおいしいよねー」 これはアメリカに住む日本人全員のコンセンサスだと思っていた。 そんなアメリカ人に日本人が全敗? ありえない! 今回は戦略ミスなのかなあ、日本の鉄人たちはかなり和に徹したメニューを出してきた。 それが失敗だっただろうな。 だいたい刺身も食べたこと無いマフィアみたいな俳優とか連れてきてジャッジさせるなよ。 どうせこいつら普段からピザとかブリトーとかしか食べてないんだからさあ。 人間の舌には「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」を感じる味蕾(みらい)と呼ばれるセンサーがあるんだけど 、この他に「うまみ」を感じるセンサーも存在することが最近ではわかっているんだよね。 ところが、このうまみセンサーは誰でも持ってるわけではない。 私の記憶が正しければ、日本人はほとんどの人が持っているけれど、 アメリカ人は半分近くの人がうまみセンサーを持っていない。 すなわち、うまみを感じ取れないわけだ。 そう、日本では伝統的に昆布や鰹節、いりこなどでだしをとる料理法だから うまみの概念が古くから存在するけれど、 アメリカやヨーロッパの多くは旨みという概念自体がなかったりする。 だいたい味の素と呼ばれている昆布の旨み成分グルタミン酸ナトリウムを発見したのも日本人だし。 (梅田菊苗だったっけ?わすれちゃった。) アメリカやヨーロッパにも鶏肉の煮込み汁(chicken stock)を日本のダシみたいに使うことがあるけれどね。 肉や魚から出る旨み成分はイノシン酸で、昆布から出る旨み成分のグルタミン酸とは別物。 最近日本でちょっと言われ始めてるみたいだけど、 最近の日本人の子供は 小さい頃から油っこい食べ物ばかりを食べて育っているせいで 「油舌」になっている子が多いらしい。 この油舌っていうのは油分がないと 食べ物をおいしいと感じられなくなった舌のことらしく、 煮物や和え物といった油を使わない 伝統的な和食のおいしさがわからない子供が増えているんだって。 あ、これってアメリカ人にも当てはまるなと思った。 油をあまり使わない和食で責めて行っても、 うまみセンサーの無い油舌のアメリカ人にはおいしさはわかんないよ。 それにさあ、森本、ちらし寿司はないだろ。 いやね、確かにちらし寿司はおいしいよ。 でも、例え日本人の俺がジャッジだったとしても地味なちらし寿司よりは マリオ・バタリが作った何かおいしそうなイタリアンの方に食指が動くと思うな。 あと、和食って飾り付けがやっぱ地味だね。 ま、それが和の美しさなんだけどさ。 でも細かく刻んだトマトやら何かの芽やらを上から散らして 色とりどりに飾られてるイタリアンとか見たら、 やっぱおいしそうだもん、食欲そそられるよ。 う~ん、でもやっぱりアメリカ人には和食の美はわからないだろうなあ。 関係ないけど、Queer Eyes for the Straight Guyの 料理&ワイン担当Ted Allenがジャッジとして出てたのが何か笑えた。 あの人、一応、料理評論家なんだね。 単にそこらへんの料理やワインに詳しいおっさんかと思ってた。 でも何でChicago Magazineなの?New Yorkじゃないの? アイアン・シェフを見てちょっと刺激を受けたらしく、 突然、味噌汁にHeavy Creamを入れてみようと思い立って、、、やってみた、、、、 めっちゃうまい!これ、いけるよ! 味噌とヘビークリームがこんなに合うとは思わなかった。 何かクリーミーでマイルドで(当たり前だけど)、味噌汁とはまた違う別の味。 最近はフレンチなんかにも味噌を使うことがあるようだから、 もしかしたら料理好きな奥様方には良く知られたことなのかもしれないけど、 ホント、味噌とクリームって合う。 是非、一度お試しあれ。牛乳でもいけるかも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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