「情熱大陸 蜷川幸雄」
稽古がたったの8日間! アホな。歌舞伎の世界って、すごいですね。400年の伝統。400年プラス8日間、ということでしょうか。 蜷川が歌舞伎を初演出した。演目はシェイクスピア!シェイクスピアを歌舞伎にするということは、交響曲を長唄に変換するようなものだという。 番組中、翻訳者の小田島雄志いわく、「愛したらドカンと愛す。嫉妬したらターっと嫉妬する。これがシェイクスピア。その太い感情を表現するに歌舞伎役者はすばらしいものを持っている」 太い感情表現。歌舞伎とシェイクスピアをつなぐもの。そして蜷川幸雄の演出も、太い。 芝居は開幕後3分が勝負だという蜷川。「身毒丸」では、蓮華灯篭に浮かび上がった仮面売り、鬼子母、こびと車、せむしなどが真っ白に顔を塗り行き交う中、清烈な美少年が母の写真を握りしめ泣きながら現れた。「ロミオとジュリエット」では愛のために死んでいった子供達の顔が3階建ての塔を埋め尽くし、黒棺をかついだ喪服の集団が列を成した。そして歌舞伎「十二夜」では、マジックミラーを使って観客の顔を映し上げたかと思うと、満開のしだれ桜が花びらを散らし、さらにそれが割れて船が流れ込んでくる。観客を一瞬にして日常から逸脱させ舞台へ引き込み巻き込んでいく。ブラウン管を通してすら感じられる、いつものふわっとした空中遊泳感。魔法の杖がまた振られている! 蜷川が学長を務める桐朋学園芸術短期大学での授業風景はこれまた圧巻。 「話聞いてろよ。お前らに対して言ってんのに、頷かなかったらコミュニケーション取れないだろ。そんなんで演劇の場なんて成り立たないだろ」 「現代の生活が、他人と関わらずにメールやインターネットや携帯で成り立つじゃない。でも生々しい接触やコミュニケーションの願望を我々はかつて持っていたかあるいは、今でも必要としていて、君達はまだそれを使っていないのかもしれない。それを使えるようになれば、人間としての持分が増えていくわけじゃない」 このことはインタビューなどでも再三蜷川が言っていることで、ダメ出しされたらみな同じ顔をする、感情を外に出そうとしないがそれでは演劇はできない、と、「kitchen」では成宮くんの身体を洗濯バサミ攻めにした。蜷川は現代の若者の核心をつかんでいて、理解しながらより高みへ私達をリードしてくれる。蜷川の目線の暖かさにいつも泣かされる。 「俺一番先にトロ食うんだよ」蜷川さんと私の共通点、ひとつありました・・・。「近代能楽集」大阪公演はすでに始まっています。16日に行ってきま~す。竜也君たちと、そして蜷川さんに会いに。