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Cirou

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Aug 9, 2004
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カテゴリ:長編小説
[AM11:20]

 多佳子はとっさにレジのカウンターに逃げ込んだ。
 若い店員は刃物を向けられ、硬直していた。

「金を出せ」

 マスクをした男は再びそう言った。
 カウンターに放り出された黒いナイロン製のバッグを、若い店員がビクビクしながら引き寄せた。
 多佳子は犯人の視界になるべく入らないよう、カウンターの奥で身を縮めていた。

「早くしろ!」
 緊張に引きつったような声で男は店員を急かせた。
 気の毒に、若い店員は今にも失神しそうなくらい真っ青になって、決して演技ではなくレジから金を出すのに手間取っていた。
 多佳子は男の言葉に、妙ななまりがある事に気がついた。方言ではない。外国の人間が日本語を使う時の、独特のなまりだ。
 アジア系なのは確かだった。背はそれほど高くなく、帽子からは黒髪が見える。
 外国の犯罪者は人を殺すことを躊躇わない。どこかで読んだ言葉が多佳子の脳裏に蘇ってきた。
 そして、強盗などは組織的に行う場合が多いと書いてあったような気がする。
 この男にも、仲間がいるのだろうか?

 店内にいた他の客も、まるで凍りついたように動かなかった。
 さっきまで甘えた声を出していた女子高生は、彼にしがみついて真っ青になっている。しがみつかれた彼の方も真っ青だった。
 年配の女性は棚の影で小さくなっている。
 多佳子は緊張とパニックでどうにかなりそうだった。
 早く金を持って出て行ってくれと心底願った。

 その時、勢いよくコンビニのドアが開いて、アーミー風なズボンに鍛えられた肉体の男が入ってきた。
「做著什麼!早」
 そしてナイフを持った男に、低く怒鳴った。
 後から入ってきた男は、ひどく若そうで、やはり帽子にサングラスをしていた。
「・・別發怒・・・」
 ナイフを持った男が何かを言ったが聞き取れなかった。
 多佳子が男たちのやり取りに気を取らていると、突然、パァンッ!というような爆発音のようなものが耳に飛び込んできた。
「別射撃!警察來!」
 ナイフを持った男が何かを言いながら、後から入ってきた男の腕を慌てたように引っ張った。
「這個東西們打算逃出」
 若い男は動じる風もなく、何かを言い返した。
 若い男の前には、先ほどの高校生カップルが床の上に放心したように座り込んでいた。男は拳銃を構えていた右手をゆっくり下ろした。
 逃げようとした高校生カップルに向かって、発砲したのか。
 よく見れば、本棚が並んでいる所のガラスが放射状にひび割れていた。

 撃った・・・・

 多佳子はまるで、映画の中に紛れ込んでしまったような錯覚がした。
 このコンビニはセットで、この男たちは俳優。どこかでカメラが回っているのかもしれない。
 もし撃たれても、血糊が飛ぶだけで死なないのだ。
 多佳子は血まみれで横たわる自分の姿を想像した。

 イヤだ。死にたくない。
 私、まだ子供を産んでない。運命の人にも出会ってない。
 死にたくない。死にたくない。死にたくない!!

 カウンターの陰に隠れた多佳子の目の前で、若い男が今度は呆然としている店員に拳銃を向けた。
「射撃不早」
 低い声で早口に何か言った。
「不可做那樣的事・・・!」
 ナイフを持った男は男はひどく動揺していた。怯えたような様子で、若い男を宥めているようにも見える。
 それに対し、若い男は妙な程落ち着いていた。ナイフを持った男よりも若そうなのに、主導権はこの男にあるようだった。
「翻譯早」
 若い男に促され、ナイフを持った男がカウンター越しに店員と向かい合った。
「急げ。早くしないとこの男がお前を撃つ」
 店員は今にも泣き出しそうになりながら、震える手で必死に鞄にお金を入れ始めた。
 その様子を見つめていた多佳子は、極度の緊張のせいか、思わず持っていた荷物を手から落としてしまった。
 静まり返った店内に、ガサガサガサとコンビニ袋の乾いた音が響き渡る。
 顔面蒼白になって恐る恐る顔を上げると。拳銃を持った若い男が多佳子を見ていた。

「ヒッ・・・」
 喉から掠れたような、引きつった悲鳴が漏れた。
 
 単なるエキストラから、主役になってしまったかのようだった。
 男がゆっくり多佳子に拳銃を向けた。その唇は微かに笑っているようにも見えた。

 私、こんな所で死ぬの・・・?

 頭の中が真っ白になった。
 指先が異常に冷たい。

「止住!別弄傷女性!」

 突然、多佳子と拳銃を握った男の間に何かが割って入った。
 多佳子は驚いてその人物の背中を見つめた。
 コンビニのエプロンをしている。お金を入れている店員とは別の店員だった。
 何故彼は、中国語を話しているのだろう?
「想你死嗎?」
 苛立ったような若い男の声がした。
「不早、警察來」
 それに店員が返事を返す。

「大丈夫。アナタを傷付けさせたりしない」
 背後に多佳子を庇う形で、彼はそう言った。

-----

 ・・・どうなっていくんでしょうか(汗)
 中国語が上手く表示されるのか謎です。化けてたら申し訳ないです。
 訳も付けようかと思ったんですが、多佳子さんと同じ視点で読んで頂きたかったので止めました。
 それに大したことは言っていません(笑)何となく漢字読めば分かりますね。
 あと、1~2回くらいで終わらせたいなぁ・・・とは思っているのですが。またムリヤリになりそうで怖い(笑)





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Last updated  Apr 6, 2012 07:39:05 AM
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鳥蘭丸@ うにゅぅぅぅぅ…… 可愛がってもらうだけ可愛がってもらって…
霧月詞音@ Re:◆ ヴァン・ヘルシング ◆(09/05) きゃ~、見たいんですよ!!!私。 あと…
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