R86 かめ壺貯蔵 五百年蔵 田苑酒造
透き通ってよどみひとつもない水面に、 ふぅ、なんて綺麗....と、まずは溜息....それから、どきどきする気持ちを抑えながら、竹の柄杓ですくって、そぉっとグラスに注ぎ、したたる雫を切って、甕の脇に添え置く。このアクションが妙に落ち着きを呼び起こす。いざ、飲まん! とろんとろん、まあぁぁぁったり。柔らかな芋の風味が口の中でゆっくりと転がりながら、徐々に広がっていく。そのあまりのとろみに今一度甕の中を確認するが、水面の静かさに変わりはない。 試しに柄杓ですくってみるが、衝撃的なまったり感につながるようなものは見えない。山奥に流れる渓流のようにただ澄んだまま....垂れた雫が波紋を描き、広がり消えていく。 あぁ....染み渡るとはこういうこと。グラスに口を付ける度、身体の隅々に、じんわりと優しさが広がっていく。旨いとか美味しいとかそんな言葉は意味をなさない。心の中まで浄われていくようだ。至福の時は今。まさに幸せになるとはこういうこと。美辞麗句の必要なし。 ただ、このまったりとした幸福に身を委ねることにしよう。ひたすらにあらゆるものに感謝しながら....。平成19年元旦 かめ壺貯蔵「五百年蔵」芋25度1800mL甕入