変わらないもの
その人がもつ"風"はいつになっても変わらないように思う。きっと誰にも変えることができない。その人自身だって。ぬくもり、優しさ、穏やかさ、和やかさ、厳しさ、冷たさ。変わるものはなんだろ。していること。 考えていること。 見た目。 愛以外の心。今日、駅の階段で二人の若い男が殴りあいになっていた。階段で肩が当たっていたのを、私は手すりの向こうからなんとなく見ていた。無表情の若い男は、うつむいて何事もなかったかのように通り過ぎようとする若い別の男の肩を掴んで殴りかかった。全てが静寂の中にあった。まわりの人間たちは当たり前の日常が、突如非日常になったことを即座に理解できずに、凍り付いていた。ただひとつ、そばにいた年老いた男が放った大声がプラットホームに響いた。「やめろ!!」殴りかかった若い男は、表情を変えることなく、すっと背を向け階段をのぼって人ごみの中へ消えた。殴りかかられた若い男は、興奮さめやらぬ顔で棒立ちになっていた。そこにも変わるものがひとつあった。そこにも変わらないものがひとつあった。変わるもの、この国にこれから増えていく危険。変わらないもの、そんな日本に必要なもの。そんなこの国の"風"を感じた。