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November 27, 2008
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カテゴリ:喪失と再生
先日、ある雑誌の取材に協力した。半年振り2回目の協力だ。

編集者の方と、小説教室で知り合ったお友達とカフェで待ち合わせ。
目的はいわゆる「ネタ提供」で、地域の情報についていろいろとお話をした。

問題は読者モデルになってくださるご夫婦の紹介。
かなり前に依頼されていたのだが、「この人がいい!」と思って紹介した人には続々と断られ、締め切り間近だというのにアポが取れていない。
いっそのこと、その辺で声をかけてナンパしたらどうだろう?と相談しながら周囲を見渡すと、私たちの後ろのテーブルに座っているナイスな若いお母さんが目に入った。

おばあちゃんらしき人と一緒で、おばあちゃんの方が赤ちゃんを抱っこして、私たちと背中合わせに座っていた。
どうやって話しかけるきっかけを作るのだろう。まあ編集者の方がやってくれるのだろうけれど・・・。
と思っていたら、私の横に座っていたお友達がいきなり「んっ?」と言って振り返った。

目のぱっちりした赤ちゃんが、友人の袖をひっぱったのだ。
赤ちゃんを抱っこしていたおばあちゃんらしき女性が「あらあら、ごめんなさい」とうれしそうに微笑む。
「びっくりしましたー。でもかわいいー」と友人も言葉を返す。

私は正直「ちょっと辛いな」と思ったけれど、これは話しかける絶好のチャンス。
私も頑張って会話に参加しようと、満面の笑み状態のおばあ様に「おいくつですか?」と当たり障りのない質問する。
すると「この23日で8ヶ月になったんですよ」との答え。
「8ヶ月なんですか?しっかりしてますねー。髪の毛もふさふさ」と応えつつ、考える。

8ヶ月前の23日と言えば、3月23日。
碧雪の誕生日と同じだ。

確認すると、そうだと言う。
365分の1の確率に、私は思わず「うちの息子と同じ!」と声に出して言ってしまった。

編集者の方も友人も、私が子供を亡くしたことは知っている。

二人には気を使わせてしまうかもと思ったけれど、子供のネタならきっと若いお母さんも会話に参加して警戒心を解いてくれるだろう。これも取材の為なのだ。
大丈夫、碧雪も8ヶ月の時はまだ元気だったもの。そう自分に言い聞かせながら。

これをきっかけに若いお母さんにも明るく話しかけた。
「雑誌に出てみませんか?私も出たことがあるんです。いい記念になりますよ」

結果、取材交渉は上手く行き、彼女も思いがけない話に喜んでいただけたようだった。
おばあちゃんが「この人のお子さんの写真も見たいわ」と編集者の方におっしゃったのだが、彼は「あ、前回はご夫婦って設定で撮影しているので」と上手くかわしてくださった。


友人も、編集者の方も、碧雪を失ってから新しく出合った人だ。
しかも私の事情を知っていてくれ、フォローしてくれる。

編集者の人が仕事で去った後、友人にいつも持ち歩いている碧雪の写真を見てもらった。
人に写真を見せるのは、はじめての経験で緊張したけれど、「かわいい」と普通に褒めてくれた。


碧雪を亡くした後、家族で「碧雪はあの時こうだった」「あんな性格だったからきっと今ここにいたら・・」という話をする時が、私にとって数少ない救いの一つだった。
普段はずっと息を詰めて生きているような感覚があるのだが、こういう話をする時だけは心からくつろぐことがでるような気がした。

けれど、条件さえ揃えば、今日のように碧雪を知らない人にも碧雪の話をすることができるのだ。

この発見は、私にとって新たな道を照らす光のように感じた。

世の中にはこんな道もあるのだ、ということに私は1年半かけてようやく気付くことができた。

少し辛くはあったけれど、「心に傷のある私」を世間に認めてもらったような、しみじみとした安堵感も感じた一日だった。





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Last updated  November 27, 2008 06:27:52 PM
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