カテゴリ:書評/本の紹介
旅行記の途中ですが、最近読んだ本の中で、印象に残ったものをざっと紹介しておきます。
読書メモがたまってしまったので・・・。 (2記事同時UPです。前の日記に京都旅行記4があります。) 今日紹介する6冊のキーワードは「闘う女」。適当に大量に本を手に取っているのに、いつの間にかこういう傾向の本が集まりました。 ■もっと塩味を! 林真理子 田舎の主婦が、パリで星付きレストランの女主人になるまでの転身の記録。 林さん自身が「書くのが苦手」と認める「グルメな人の舌」を上手に書ききってある。前半は恋愛をからめて華やかでテンポの良い展開に感服。プロ作家の技だ。 でも後半、乳ガンの闘病についての描写がちっとも現実感がない。そこが残念。 また、物語の大半を通じてほとんど出てこなかった主人公の娘が終盤でいきなり現れ、重要な役割を担うのが、とってつけた印象だった。雑誌連載の作品だからいろいろと制約があって仕方ないのかもしれないけれど。 「女のいやらしさ」を書かせたら天下一品な林真理子さんには、ぜひ母娘の心理的な葛藤を書いてほしいと思う。 ■わが故郷は平野金物店 内藤洋子 両親と死別した少女が、家業の金物店を営み、弟を立派にプロ野球選手に育てる半生記。 主人公は知恵と工夫を屈指して「出張販売」をしたり、新しい職にも果敢に挑戦したりする。誰にも教わらずに不動産取引をする様には「生まれ持った頭のよさ」を感じる。 授賞式でお会いした時に、私は内藤先生から「あなたは私に似ている」と言っていただいたのだけれど、私の苦労や苦悩なんて甘いものだと思った。 さらっと書かれたお父様の死後の看護師たちの無神経な私語とか、親戚の仕打ちがスパイスになっている。これをまだ若い少女が一人で体験したのかと思うと胸がつまった。 *楽天ブックスでは売り切れ中* ■阪急電車 有川浩 図書館戦争で悪(?)と戦う乙女を書いた有川浩が、今度は人生と戦う女を書いた。 彼女はもはや「ライトノベル作家」でなく「ライトノベル出身の作家」である。 ・・・なんて書評家ごっこはここまでにして。 この本はローカル線の各駅にからめた、女の静かな戦いとすれ違う人生を描いたオムニバス。 香水おばさん軍団に対しては手ぬるいっ(もしくは彼女側の事情も書くと公平だと思う)と思ったけれども、コバンザメ女の描写などはリアルでさすが。 私と同世代で「ただの主婦」という女性はいないと思う。かつて何らかの職業についていた女性がほとんどだし、「就職せずに結婚した」という人はむしろ強い信念を持った人だと思う。最近の有川浩さんの作品を読んでいると、そんなことを考えさせられる。 ベタ甘のラブストーリーが好きって方にはラブコメ今昔もおすすめ。 ■女はかくもままならぬ 中村うさぎ 筆者の日常生活の描写から始まって(これがまた波瀾万丈でおもしろいのだが)、考察を深め、(とりあえずの)結論に結びつける。中村うさぎの職人芸は完成しつつあると思う。 色物的に見られがちだけど、彼女は女の自意識と痛みについて目をそらさずに率直に書いている希有な人だと思う。女のいろんな自意識と常に戦っている人。私はこの人が好きだ。 ■にっぽん入門 柴門ふみ 少し前に話題になった「蘇民祭」のルポが冒頭にあったので手に取った。 青森には三内丸山遺跡という日本最大級の縄文集落跡があるらしい。そこでは墓が多数見つかっているそうで、大人の墓は集落から外れた場所にあるが、子供の墓は住居近くにある。そこで柴門さんは「五千年昔から、親より先に死んでしまった子供に対スリ嘆きの情があったのか」と推測し、「死んだ子を悼む気持ちは縄文時代からすでに日本人にとって重要な感情だったと思われる」と結んでいる。 柴門さんは夫の両親と同居しながら子育てをして漫画を書き続け、お舅さんを二年前になくしたそうだ。 柴門さんは「お仕事です!」で「子供は時間と体力を食い尽くすモンスターだ」という旨のことを登場人物の女性起業家に言わせていたけれど、今でもそう思っているのだろうか。 この人の「夫に対する本音」を一度読んでみたい。 ■東京に暮す キャサリン・サンソム 1883年生まれのイギリス人女性が、1928年から1936年まで東京で暮らした体験をつづったエッセイ。 当時のイギリス人に日本のことを説明するために書かれたらしいが、現在の私たちにとっても興味深い。 日本人の使用人の使い方には最初苦労したみたいだが、次第にそれをマスターし良好な関係を築いていたようだ。それでも「紅茶は自分で入れるしかありません」と書いている。少しさました湯で入れる緑茶になれている日本人は、あつあつに沸騰しているお湯を入れるということがどうしても理解できない、らしい。 彼女はとても好奇心がつよくて活動的で、日本アルプスに登り平湯の温泉旅館に泊まったりもしてたことには驚かされた。 興味深かったのは、「日本の女性」分析。日本ではつい最近まで「お人形のような娘」が理想の娘で、人間的な西洋風の娘よりも男性に人気があると彼女は言う。英語で「人形のような女性」というと、かわいいけれど退屈な女性という意味で、特に感心する女性ではないのに、と注釈をつけて。それでも今後はその価値観は変わっていくだろうし、その変化の波を感じていると書いてある。 たった十年弱の暮らしの中で、よくぞここまで見て聞いて考えたものだと感心した。 彼女の時代にブログがあったら、きっと彼女は人気ブロガーになったことだろうと思う。元祖駐在妻ブログ。 *画像なし* 京都旅行記はあと2回で終了予定です。今週中には上げたいです^^; お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 11, 2009 11:01:10 AM
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