福島で味わう『北朝鮮ツァー』
2012年7月8日(日)10時0分配信 日刊ゲンダイ
「皆さん、どうぞ~、コチラです~」
行く先々で施設を案内してくれたのは、若くてキレイな女性社員たちだった――。
東電が4日、報道陣に公開した福島第2原発。
震災で「レベル3」の深刻事態に陥り、今なお復旧作業の真っただ中だが、予想外の“ほのぼのムード”に、記者は思わず拍子抜けした。
未曽有の事故を起こした第1原発から南に約12キロ。
施設に向かうバスの外には、住人がいなくなり朽ち果てた家屋、荒廃した田畑が延々と広がっていた。
地獄のような光景だ。
それなのに、敷地の中に一歩入るとまるで別世界。
原発作業員はほとんど見当たらない。
設備を説明する男性社員も終始なごやか。
報道陣には放射能を防ぐマスクと手袋が配られたが、敷地内でマスクをしている東電社員はほぼゼロ。
「マスクはしなくても大丈夫ですよ。私たちも作業のとき以外は着用しませんから」とノンキなもので、極めつきが、エスコート役の美女たち……。
すっかり安心しきった報道陣からは、「ちっとも危なくないじゃん」の軽口も聞かれたが、バカも休み休み言え! だ。
前線基地の「Jヴィレッジ」で報道陣が通されたのは、作業員がひとりもいない小ぎれいなホールだった。
しかし、外に目を向けると、過酷な事故現場から汗だくになって戻ってきた作業員たちの姿。
肩で息をしながら、被曝(ひばく)線量チェックに列をなしていた。
東電はそんなところは一切見せようとしない。
作業員に話を聞くことも許さない。
決められた場所を、決められた時間通りに公開しただけ。
厳しい実態は包み隠し、ひたすら安心ムードを演出したのである。
これじゃあ、都合のいいところだけ見せようとする北朝鮮ツアーと同じだ。