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カテゴリ:愛読書
廃用身 259.廃用身 廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく―。 老人医療に深く携わっていた私にとってものすごく衝撃的な本でした。 どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションなのか 一瞬解らなくなるほど現実的に物語りが進んで行きます。 私の中では絶対になしなのですが、ありと思う人もいるんじゃないかなあって。 書かれていた内容でちょっと胸が痛くなることも・・・・。 確かに治療の中に褥瘡を治すために尿道カテーテルを留置したり マーゲンチューブ(胃に栄養を送る鼻から入れる管)が入りにくくなると (数年に一度このチューブが誤って気道に入り、死亡事件がある) 胃瘻と言って胃に直接栄養を送り込む穴を作る手術をしたりします。 どんな治療もどんなケアも患者さんにとって一番ベストでなければいけないと 思っていますが意思疎通の出来ない患者さんも多く難しい問題です。 漆原医師のレポートは成功例だけが強調されすぎていて絶対に出てくる 問題について書かれておらずそこが不完全燃焼。 そしてその後の編集者が書いたレポートを読んでそれも計算済みだったのかと 作者の計算高さにやられたなあって思いました。 最後のほうは少し非現実的な色が濃くなるけれど、それでも十分現実性も あるなと思いました。 グロテスクな描写も多く苦手な方もいると思いますが、読む価値ありの本だと思います。 特に最初のレポートに書かれている虐待の現状や、痴呆の問題などは とてもリアリティがあります。 さすがドクターが書かれた小説だと思いました。 すごく働いていた時のことを思い出しましたよ。 そういえばあんな人がいたな・・・こんな人もいたな・・・って。 そういえば別の方の感想に切断してしまうと点滴する時困るなみたいな ことが書かれてたんですが原則麻痺側に点滴はしません。 なので廃用身と呼ばれる四肢に点滴をすることはないんですね~。 なんてとても冷静に考えてしまいました。 これを読んで初めてオペ室実習に行った時、切断された足を 学生3人で運んだことを思い出しました。 ものすごく重かったんです。 3人で運ぶくらいの重さ・・・。 あれは忘れられないなあ・・・・。 あと切断部の皮膚がつるつるしてきれいっていうのは本当です。 私も何度も見てるけどどの方もつるつるでしたね。 そんな切断部を見慣れてる私でも廃用身の切断を想像するとちょっとぞっとして しまうので一般の方には受け入れられないでしょうね、やっぱり。 というかこの外的変化にやっぱり心が耐えられないと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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