多崎つくる
作者本人が望む望まないにかかわらず、鳴り物入りで登場し、売れたのかはしらんけど、これほどつまらない小説は久しぶりだ。概要をいえば、高校時代の友達グループに大学生になったら突然村八分にされて、それがトラウマになってしまい、ついつい36歳になってしまったけど、そのひっかかりを改めて穿り返しながら自我同一性を取り戻そうとする話。くだらない。主人公や周辺の描写にも違和感を覚える。たとえば36歳というと私とほぼ同年齢なのだが、「イブサンローラン」のネクタイ締めてみたり、大学生の時にはブルックスのジャケット着てみたり、まんま80年代のセンスだったりする。あとは小説の筋にに関係ない外車のメーカー名がやたらと出てきたりする。90年代の流行はポールスミスとかじゃねえの?当時ならせめてアロウズとかビームスとかで服買うだろう・・・。そりゃブルックスも一瞬復活したけどさ・・・。なにも僕はブランド品が嫌いではないのは言っておく。なにも車やら小物のメーカー名まで事細かく書く必要は無いだろう。こういったところに作者の取材不足と、センスの古さが伺える。いわゆるバブルの匂いがプンプンする。なんにせよ残念だ。イブサンローランのネクタイなんか同い年に近い私でも欲しいとは思わないし、かつそれが話の筋に複線として絡んでくることも無いのだから、意味が解らない。はっきりいえば主人公の「多崎つくる」は現実から大幅に乖離しているというか、とても現在36歳の人物とは思えない描写ではないか。ストーリーは主人公のトラウマを作り出した友人4人と、交際中の女性を軸に描かれるが、それがどうした、といわれればどうともない理由で、グデグデしている。また、主人公の付き合っている女性と、過去の友人のうち女性である「クロ」のセリフの言い回しが似ていて、キャラ設定があるから区別できるが、そこらへんもどうかな、と思ったりする。「料理をこしらえる」とかって今の人言わないでしょ。それも二人・・・。唯一興味が沸くのは作中に灰田と緑川って話の骨格とは微妙にリンクする登場人物がでてくるのですけど、ここらの話がストーリーとしてはおもしろいかなと思える。というか話の本筋はどうでもいいレベル。サクサクよめるけれども、80年代~90年代前半ギリギリの、匂いがプンプンしており、いずれにせよ、買って読むほどのものとは思えない。村上春樹はいづれ昔の作家なんだろう。こんなものを書く作家にノーベル賞候補など噴飯である。それなら遡ってまず芥川龍之介や夏目漱石に与えるべきだろう。