【ボンビー・知恵の友】
実は知恵の友、最近いろんな人と話していく中で、自分がボンビーであることに気づきました。・家に電話がひかれたのは物心ついた後。・子供の頃、トイレには新聞紙を四角く切った紙がおいてありました。・小学生のときから、NHKの受信料はカラーと白黒で値段が違うことを知っていた。・ツナ缶1つでどんぶり2杯食べられます。・たまごごはんをおかずに、白いごはんを食べられます。・キャベツ1玉で3日しのぎました。・弁当に、子供の食べ残しのハンバーガーが入っていたことがあります。・やぶれた靴下は最後に1回はいてからでないと捨てられません。・マクドナルドのハンバーガーが200円くらいしていた頃、100円セールをしたら必ず10個くらい買ってました。・即席めんについてる七味をなんとなく捨てられません。・チョコは噛むと早くなくなるので、ゆっくり溶けるのを待ちます。・ビッグマックのキャベツが落ちないように、いつも苦労してます。・デジカメの見ない写真はスグに消さないともったいない気がします。・雑誌が安く買えるので、新宿西口は大好きです。などなど。そんな私ですが、お金はためて一度に放出するクセがあります。学生時代のある日、CDラジカセの調子が悪くなり始め、なんとなく電気屋に行きました。適当な値段でCDラジカセがあったら買おうと思ったのです。当事、だいぶ安くなったとはいえ、CDラジカセは3万円くらいはしてましたから、じっくり吟味して買わないと。そう思ってました。なんとなく相場観をつかんで、帰ろうとしつつも、奥のコンポコーナーもひやかしで覗いてみました。まぁ、どれも立派で、アンプだけで10万円するのなんかはザラです。当事の僕の生活費はもっぱら親からの仕送りです。寮に入っていたので、生きていくにはほとんど困りません。だから、お小遣い相当として3万円が許されていました。3万円なんて、ちょびっとデートしたらふわっと消えてしまう額ですから、10万円のアンプなんて、ほとんどヤクザのおじちゃんが乗ってるベンツとさして変わらぬ別世界でした。しかし、どうしても入ってくる、澄んだ音。それでいて重厚感がある低音。ふと、見た先にあったのはONKYOのLiverpoolというシステム・コンポでした。それまで安っぽいCDラジカセの音になれてきた私にとって、それはそれは目のさめる音でした。周りにある、アンプだけで10万円を超えるようなバラ・コンポは欲しくなりもしない、遠い世界でしたが、このLiverpool、全部込みで25万円を切っています。しかも、LDプレイヤーコンパチブル付。これで自分の人生を彩ることができたら、それはもう幸せの極地でしょう。それはもう、貧乏生活における一点豪華主義。寮の家賃は食事付で4万円なのに、目の先にあるのは25万円のシステム・コンポです。これを入手するためにはもう、金を稼ぐかしかありません。その日から、モーレツにバイトです。イベントの場内警備、飲食店勤務、消火器の点検、いろいろやりました。歓楽街中洲を肩で風切るおにいちゃんたちと丁々発止のやり取りをすることも覚えました。それぞれの職場に向かう手段は自転車。バスなんて使ってたらお金は溜まりません。雨が顔にかかろうが、台風で(カッパは着てますが)ズボンが下着まで濡れようが、車に突き飛ばされて自動販売機の間に挟まろうが、毎日毎日がんばりました。平均した時給は600円程度だったと思います。3ヶ月ほど働いて、季節も変わったある日、ようやく目標達成額に達しました。どうやって、コンポを持って帰ったか、覚えていません。発送して貰ったのかなぁ。先輩の車借りたのかなぁ。でも、ようやく自分のものになりました。毎日毎日、音楽ばかり聞いてました。目覚めはLiverpoolのタイマーでした。テレビの音も、必ずLiverpoolを通していました。引越しのたび、最後に片付けるのはLiverpool。最初にセットするのもLiverpool。いつもいつもLiverpoolでした。MDウォークマンを買ったときにも、このLiverpoolに光ファイバーがつなげられるのを知ってビックリし、また好きになりました。しかし、転機は訪れます。最初におかしくなったのはLDコンパチブル。トレーがでてこなくなることが多くなりました。音が飛ぶようになりました。ついに、なんら音が出なくなりました。残念ながら、LDコンパチブルはただそこに収まっているだけ、という存在となりました。次におかしくなったのはCDプレイヤー。曲の途中で勝手に次の曲に飛ぶようになりました。ついに、シャー・・・というCDが回転する音はなっているものの、プレイが始まらないようになりました。それでも、Liverpoolは私の部屋の中心にどっかりと座っていました。やっぱり毎朝、タイマーで(ラジオだけど)私を起こしてくれました。テレビもビデオもAVも、Liverpoolを通した音で楽しみました。ほぼ10年、私の部屋の中心に座りつづけてきた彼にとっての最大の危機、が訪れました。私の結婚です。結婚するにあたり、重複している荷物はいずれも片方のもののみを残すことにしました。私の持っている冷蔵庫が大きかったので、冷蔵庫は私のものを残し、妻のものは捨てました。私の持っているパソコンは古かったですが、妻は幸い持っていなかったので、生き長らえました。私の持っている電子レンジが新しかったので、電子レンジは私のものを残し、妻のものは捨てました。私の持っているアルバムは不適切な写真が多かったので、こっそりと捨てました。私の持っている洗濯機は二層式だったので、洗濯機は妻のものを残し、私のものは捨てました。コンポの段になって、妻はあっさり言いました。「コンポは私のほうでいいよね。」「え、、、でも、これ、買ったときけっこうしたし。。。」「これ、壊れて使えないよね?」「でも、スピーカーだけでも使えるし。。。」残念ながら、妻のミニ・コンポのスピーカー端子は特殊な形でした。10年、私の生活を彩りつづけたLiverpoolはこうして、非業の死を遂げました。今でも思い出します。スイッチを入れた瞬間、暖かいオレンジ色が心を和ませる液晶画面。液晶で表示されるLiverpoolのロゴマークで、iの上の点が帽子になっていて、くるくるっと回ってiの上の位置に収まる様子もまた、ほほえましい姿でした。でも、お別れでした。彼は潔く、身を引きました。だけど、きっと、Liverpoolは私のことを恨んでいるんでしょう。それが証拠に、桃鉄では、私にボンビーがついたときに必ずキング・ボンビー に変身して、すべての財産を処分する羽目になるんですもん。。。