「氷壁」 またまた、う~ん
ドラマ「氷壁」は、 小説「氷壁」からずいぶん遠くへ行ってしまいましたね。だから「原案」としたんじゃないですか、 というのがNHKの言い訳かな。 たしかに、仮にこのドラマが、小説「氷壁」と何の関係もない風を装っていたら、「氷壁」のパクリだ! と文句をつけるものね。つまりはタイトルがいけないのか。「愛とカラビナの破砕」(原案「氷壁」)「レディース・フィンガーに延びたザイル」(原案「氷壁」)「推定遭難」(原案「氷壁」)とか。さて、人間ドラマ、 あるいは法廷・サスペンスドラマとしての感想ですが、奥さんのパソコンを勝手に新しいものに変えるわけないだろう、というお約束の突っ込みはとりあえず置いといて、元法学部生としては、「挙証責任」が気になりますね。ある人の発言を名誉(信用)毀損で訴えた場合、原告(ヤシロ)は、その発言が原因で自分が損害を被った、 ということさえ証明すればいいのです。ドラマでも、ヤシロの弁護士が、 ヤシロの株価が奥寺の発言の翌日からどうのこうの、と言っていましたね。これです。これに対して、発言した側(奥寺)が責任を免れようと思えば、自分の発言が真実に基づくものであったことを 証明しなければならない。そして、真実に基づくのかそうでないのか、裁判官がどちらとも心証を得られないときは 原告の訴えが認められる。つまり、真実性の証拠を挙げる責任は、発言者側にあるわけです。ドラマの中で、カラビナの実験結果について奥寺の弁護士が、「何度も使ったカラビナでも同じ結果となるのでしょうか」と問いかけ、実験者が言葉に詰まる場面がありましたが、ぜんぜん困る必要はない。ヤシロのカラビナが経年変化すると壊れやすい、 という実験データは奥寺側が提出すべきものなのです。したがって、「8000mでは誰も見ていないのです」、という攻撃も、奥寺側がカラビナの欠陥を証明した後の第二矢として放てばいいことになります。とまあ、こうやって、 私なりにこのドラマのを楽しみ方を模索しているわけです。魚津恭太の滝谷行は、奥寺恭平のK2行になるんでしょうかね。そこで遺書を残して遭難するのか。はたまた吹石一恵はベースキャンプまで行くのか。まだ先は長い。何とかそこまで興味を持続しなければならない、というわけです。