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60年代から70年代初頭まで、サッカーでその名を馳せたジョージ・ベストが、今週金曜のお昼過ぎ、ロンドンの病院で亡くなった。
マンチェスター・ユナイテッドでの大活躍ぶりは、イギリス国内ではサッカー好きでなくても誰でも一度は見聞きした事があるはずだ。ペレに次ぐ選手だったと言われる。 ただ上手いだけではなくて、かなりのエンターティナーでもあった。一度など、ドリブル中スパイクを脱いで、その足でボールを蹴っ飛ばしてゴールしてみせたりしていた。 北アイルランド出身の彼は、フットボール界初のスーパースターだった。今でこそベッカムだのファーディナンドだの、華やかな(ピッチ以外での)選手の存在が当たり前な世界だが、ジョージはそのハシリだった。 毎晩パーティをはしごして、きれいなオネエちゃんと遊んで、面白い社交界の人々と交流して、でっかい家を建てて、ブティックなんかもオープンしちゃったりして。テレビでもCMにひっぱりだこ。 彼はとっても面白い、一緒に喋って楽しい、気どらないあんちゃんタイプだったらしい。 ただ、アル中だった。 結婚して、息子が出来ても、彼の生活スタイルは変わらなかった。 クラブの練習も休みがちになり、若干27歳で一度選手を引退。その後カムバックして(1シーズンだけだがエディンバラのヒブスでもプレイしていた)みたものの、昔取った杵柄とはいかずに終った。この間もずっとアルコールをひたすら飲み続け、破産も離婚も経験し、再婚して、肝臓の移植手術も受け、これからは酒を断つと断言したもののまた飲み始め、遂には酒によって死んでいった。 ある人は、彼は偉大だと言う。フットボールの神様、アイドル、天才として、そしてその愛すべきキャラクターによって、その死を多いに惜しむ人がいる。 だが別の人は、彼は大バカで弱い人間だと言う。フットボールはすごかったけど、人気に溺れ、稼いだ金を酒につぎ込み、飲んだくれ、人から譲り受けた肝臓までダメにしてしまった。何が英雄だ、彼は、結局ただのアル中じゃないか、というわけだ。 どちらの言い分もわかる。だけど、後者に私は刺々しいものを感じる。 人間って、もともと弱いものじゃなかったか? ジョージと同じ立場に立たされても、同じことをのたまえるか? 強い人間なら酒にも溺れず、素晴らしい競技生活を送って、常にいい子ちゃんとして大衆から見られて、80歳まで生きて、亡くなった時にああ、いい人亡くしましたね、ってコメントされてハッピーに終れるのかもしれない。 だけど、弱い部分があるからこそ愛されることもある。 憎めない事もある。 強い人間なら、弱い人間がどうして弱いのか知ろう、わかろうとするもんだ。 冷たい物言いをする人に、私は結構敏感らしい(笑)。 私は、好きだったけどな。結構。平気でインタビューに酔っぱらって出てきたりするのも、おいおい、とは思うけどさ。それよりも、なぜアル中になってしまったのか、止める術はなかったのか、そっちのほうが気になるよ。彼は自分の体を献体したそうだ。アル中の人たち(そうじゃない人も)に、そして彼らに関わる医師たちに、アルコールの恐ろしさを見てもらうために。 確かに彼の生き方は破天荒で、生き急ぐ人生だったかもしれない。だけど、ホントにタダのアル中バカだったら、5万人もの人たちがお葬式に参列するだろうか。 アル中って、病気なんだよ。 ただ酒が好きで四六時中飲んでるんじゃないのよ。 酒に体をのっとられちゃってるのよ。 そこをわからないと、ね。 もう、酒飲んでないといいな、ジョージ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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