山田詠美氏の ベッドタイムアイズ
いまごろになって
ベッドタイムアイズ
である。
山田詠美氏の作品をこよなく愛するのに
原点をも読まずに。
よく言えたものである。
山田氏の作品、わたしの中ではこうである。
心のひだに刻み込まれ続けるその瞬間を
一字一句規則正しく
丁寧に書き連ね
そのひだをあるとき、ざばっと広げられる。
一幅の軸がはじからはじまで広げられるように。
しまわれ丸まっていた心のなかが
おもてにさらされる瞬間。
その瞬間は
スピーカーからはみ出る大きすぎる音が
頭やおなかや皮膚や毛穴にまで達し
じんじんと響かせるように、
わたしのからだのなかに一体となって響いてくる。
打ち寄せてくる。
じぶんの思いと重なる。
思い出す。
こんな思いをしたことを。
こんな思いがひだにしまってあったことを。
痛く苦しく熱く自堕落な思いを。
音楽のように
絵のように
わたしの心のなかで
広がっていく世界。
狂おしいほどにだれかを愛したキヲクを