続けての紹介で申し訳ないですが、オリジナル版「私は貝になりたい」の映画版です。
テレビで放送されたドラマの好評を受けて、東宝が映画化した物です。
時間的にはドラマより20分程長い感じで、如何にドラマが簡潔な内容であったかは
容易に想像出来ると思います。
今じゃ在り得ませんよね？テレビの連続ドラマより長い映画なんて（笑）

見た感じでは、映画化にあたってキャストを若干豪華にしたのと、一つ一つのエピソードを
テレビよりも膨らませていると言った感じで、ほぼドラマと内容は変わっていません。
ドラマの方でも書きましたが、映像化当時の人々にとっては他人事ではなかったので
原作に忠実に映像化するだけで、充分臨場感が伝わったのでは？と考えています。

同じ映画と言う事で（宣伝しか見てませんが）リメイク版とテレビで宣伝されている部分で
比較して見るだけでも、随分と差が見受けられます。

(1)戦犯として逮捕された主人公が、リメイク版ではトラックに乗せられて連れて行かれる
　　場面がありましたが、オリジナル版には存在しないシーンです。
　　「計算された感動」を連想させられました。
(2)判決を受けた際に主人公が「なんで俺がー！」と絶叫している場面がありますが
　　オリジナルでは、他の被告が重労働刑を言い渡されているのに対して
　　いきなり絞首刑を宣告された戸惑いが静かな呟きにも似た台詞回しで演じられています。
　　正直リメイク版の絶叫は違和感を感じてます。
(3)巣鴨プリズンに奥さんが面会に行く場面がありますが、ドラマ版でも書いたように
　　オリジナルには乳児は存在しませんし、そもそも子供を面会に連れて行くシーンもありません。
　　当時、四国の高知県から東京まで出て来るには船と汽車（当然蒸気機関車）を乗り継いで
　　殆ど丸一日掛かりましたし、費用的にも子供一人連れて行くには酷だったと思います。
　　そう言った観点から見ると、乳児を丸一日掛かって東京まで連れて来る事は事実上無理であり
　　目の細かい金網を通して乳児の指をしゃぶると言うシーンを撮りたいが為の脚色
　　悪い言い方をすれば「ここで観客を感動させる」と言う意図が見えて、私的には引きました。

・・・とまぁ、リメイクを悪く言うような言い回しで書いてしまって申し訳ないですが
「そこまで脚色しなければ、内容が伝わらない時代になったんだろうなぁ」と言う印象を受けました。

昨今記事で読みましたが、死刑判決が減少傾向にあるようです。
世界的な傾向（死刑廃止）を考えてか、世相を反映してか、その辺は定かではありませんが
極悪非道としか思えない犯罪でも、無期懲役が言い渡される傾向が強いようです。
「死人に口なし」ではありませんが、被害者に対して余りにも考えが及んでいない判決。
そんな判決が多い中、たった一度の上官命令を遂行しただけで絞首刑を受けた時代。
「死刑」が良いか悪いかは別として、そう言った世相が犯罪を助長している。
そんな事考えさせられるような映画だと思います。

「水と平和はただ」、そう思われていた日本も今は遠い昔の話しなんですね。
リメイク版の方でも良いので、この映画をご覧になった方は現状の日本を
もう一度考えて貰いたいと思います。まぁ人に偉そうな事を言える人間じゃないですけどね。
わたしも・・・

【私は貝になりたい（1959年度東宝作品）】
【ＤＶＤ】

出演: フランキー堺, 新珠三千代, 水野久美, 加東大介, 笠智衆
監督: 橋本忍
形式: 白黒作品
リージョンコード: リージョン2
画面サイズ: 2.35:1
ディスク枚数: 1
販売元: 東宝
DVD発売日: 2008/10/24
時間: 113 分

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