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応急手当とは、緊急の傷病者がいるときに、救急車が到着するまでに現場で行う処置のことですが、普段応急手当などする機会はなかなか無いので、今回は忘備録も兼ねてその中でも特に重要と思われる心肺蘇生法について少し書いてみたいと思います。 皆さんの周りで、もし誰かが倒れて意識を失い呼吸が止まっていたら当然救急車を呼ぶと思いますが、心肺蘇生法とは、救急車が到着するまでに命が助かる可能性を少しでも上げるための処置といえます。 まず、下のグラフを見てください。 これは、119番に救急要請をしてから現場に救急車が到着するまでの時間を全国平均で表したものですが、2010年度の平均で8.1分となっています。 この到着時間は年々増加傾向にあり、理由は主に高齢人口増加によるものと、モラルの欠如した緊急性を要しない利用の増加など(タクシー代わりに呼ぶ等)にあります。 そこで次のグラフを見てください。 これは、心臓が止まってからの経過時間と生存確率のグラフですが、救急車が来るまでに救命処置をした場合と何もしなかった場合の生存率を比較すると、救命処置をしたほうは飛躍的に生存率が高いのが分かると思います。 逆に何もしなかった場合、救急車の平均到着時間である8.1分後辺りの生存率を見ると、10%を下回っています。 つまり、誰かが心肺停止した瞬間に自分がすぐ気付いてすぐに救急車を呼んだとしても、全国平均の到着時間で来た場合、何もしなければ90%以上の確率で死亡するということです。 皆さんが好きな投げ釣りも海で行う趣味ですので、いつ自分や仲間が溺れて心肺停止状態になるか分かりませんし、自宅で急に家族が倒れることもありえます。 救命講習を受けたことが無い方は、最寄りの消防署などで定期的に開催されてますので、これを機会にぜひ受講していただきたいと思います。(もちろん無料、普通救命講習で3時間) いつか受けようと思われている方は、受講するまでにもし不測の事態に直面した時には、今回のブログを多少でも思い出していただければ助けになるかも知れません。 今回は、最新版となる【心肺蘇生法ガイドライン2010】に基づいた方法を紹介しておきます。 一見、だいぶ複雑ですが、これでも昔よりだいぶ簡略化されています。 そして心肺蘇生法の詳細です。 動画でも確認してみましょう。( ↓ 動画) 【日本赤十字社】一次救命処置(BLS)~心肺蘇生とAED~ AEDの使い方も載せておきます。 心臓マッサージと人工呼吸のやり方は書いてあっても、これを行う意味合いや、物理的な理屈を説明しているものが少ないと思いますので、私の理解している範囲で説明したいと思います。 まず、ガイドライン2010では、意識の確認と呼吸の確認をしてどちらも無ければ心臓も停止していると見なすとなっています。この場合、心臓マッサージ(胸骨圧迫)を開始します。 ※普段の呼吸をしていない(死戦期呼吸)場合も心肺停止とみなし、胸骨圧迫を開始します。 【死戦期呼吸:心停止を示唆する異常な呼吸で、ときおりしゃくりあげるように認められる不規則な呼吸】←動画 以前は、脈拍も確認するとありましたが、太っている人に対してや、また混乱した状況で素人が正確に脈拍を取ることは困難なので省略されました。 そこで心臓マッサージの開始ですが、これは肩こりをマッサージするようなこととは全く意味合いが違います。 心臓が停止するとは、血液が全身に送られなくなることを意味します。 特に脳は、血液による酸素の供給が断たれると、ものの3~4分で死に至るか、または重大な後遺症を残します。 心臓マッサージ(胸骨圧迫)とは、心臓という血液のポンプを手動で回してやることなのです。それにより、少しでも脳に血液を循環させ、酸素を供給してやることが目的です。 胸骨圧迫することにより、心臓を圧迫して血液を送り出し、手を離すことで再び心臓が膨らみ血液を取り込む・・・つまり心臓の鼓動を人工的に再現するとも言えます。 また、押さえる深さは少なくとも5センチ(小児、乳児で胸の厚みの1/3)となっていますが、実際にはかなりの力が必要で、お年寄りなどは肋骨がポキポキ折れることもありますが、適当にやるとどのみち死んでしまうので、しっかりと強く押してください。 そして、以前は心臓マッサージは【100回/毎分】とされていましたが、ガイドライン2010から【少なくとも100回/毎分】となりました。 以前は【100回/毎分】とか言われてもなかなか分かりにくいので、よく出てくる基準として、サタデーナイトフィーバーの『ステインアライブ』という曲が【103回/毎分】でほぼ同じなので、このリズムでやれと言われますが、今の基準では、最低でも『ステインアライブ』ということになります。 ←動画リンク じゃあ、速ければ速いほどいいのか?ということになりますが、そういう訳ではありません。 心臓マッサージの意味合いを上記したように、胸骨圧迫した後は凹んだ胸が必ず元に戻らないと、心臓が再び膨らんで血液を取り込むということが出来ませんので、それを見極めるのが大事です。 じゃあ、『ステインアライブ』よりもやや早めの曲を基準にしたいところですが、僕の世代ではこの男達のこの曲しかありません。 COMPLEX - BE MY BABY ( ↑ 動画リンク) この曲のリズムは【128回/毎分】くらいです。上で紹介した赤十字のデモ動画でのテンポは、これよりわずかに遅いので恐らく【120回/毎分】程度かと思われます。 という訳で、 『ステインアライブ』以上 ~ 『BE MY BABY』以下 くらいが妥当ではないかと思います。このように、心臓マッサージの意味合いを理解していると、不測の事態にもより的確に対応できると思います。 あと、人工呼吸に関してですが、これが抵抗となって心肺蘇生法が普及しにくいという一面があります。 人工呼吸は、肺に新しい酸素を補給して、そこから血液に酸素を取り込ませるために行います。人の吐き出す息には、まだ十分な酸素が残っているので、人工呼吸は有効なのです。 しかし、見ず知らずの汚いおっさんにいきなりチューしろと言われてもキツイですよね。 これに関しては、嫌なら心臓マッサージのみでもOKです。 また、心臓マッサージと人工呼吸の練習は、くれぐれも生きた人間でしないでください。必ず、消防署等での講習会で専用の人形で行ってください。 【追記】 2014.05.11. 今年の一月に、僕の務めている会社において管理職社員(44歳・男性)が会議中にいきなり倒れました。 医者曰く、原因は恐らく突発性の不整脈であろうとのことでしたが、椅子に座っていていきなり意識を失いひっくり返りました。倒れた直後は不規則な呼吸をしていたそうですが、それも次第に停止し、顔色がみるみるチアノーゼ状態(暗紫色)となりました。 すぐさま下の階で仕事をしていた僕にお呼びがかかり、現場に駆けつけてみると、目を見開いて大の字に横臥し、失禁して微動だにしない死体のような人間が横たわっていました。 一瞬、頭の中が真っ白になりましたが、119番通報とAEDの要請は終わっていたので、すぐさま心肺蘇生法を開始しました。この時点で恐らく意識を失ってから2分程度経過です。(※後の診断では肋骨が骨折してました。それぐらい押さえることが必要です) そしてその3分後くらいにAEDが到着し、上半身裸にし電極パットを装着。心電図解析開始。電気ショック実行。(※電気ショックが実施されたということは、心室細動が継続していたということです) その後、心肺蘇生法を再開し、数分後に救急車が到着。その辺りで、弱々しく不規則な呼吸を再びし始めました。蘇生しつつある状態です。そして救急車の中で意識を取り戻しました。 幸い、この人は何の後遺症も残ることなく社会復帰できました。ただ、ICDという小型のAEDを体に埋め込み、一級身体障害者認定となりましたが、日常生活は普段通りできております。 本人は今まで心臓の疾患など無く、毎年の健康診断での心電図も異常ありませんでした。酒も飲みませんし、タバコが多めなことと、やや太り気味であったことぐらいです。 今回この人は九死に一生を得ましたが、それは倒れてからの処置がほぼ最善・最速な内容で行われたことによってであり、倒れた場所と時間が少しでも違っていたら、まず死んでいたと思います。 AED処置後の心肺蘇生で徐々に呼吸し始め、蘇生しつつある様を見て、AEDとCPRの重要性・有効性も実感できました。AEDが無くても助かっていなかったと思います。今回のことで、ウチの事務所にもAEDを設置しました。 ただ、死にこそしませんでしたが、その現場に直面した僕の感想としては、人間とはこうも簡単に死んでしまうのかと、人の死をここまで肌で実感したことはありませんでした。人生一瞬先は闇です。この晩はほとんど眠れませんでした。