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テーマ:男優たちの華麗な酒盛り(277)
カテゴリ:松竹映画
カンヌ映画祭で絶賛された作品。第50回カンヌ映画祭グランプリを受賞した。妻を殺し、8年間の服役を終えた後、極度の人間不信のために、飼っているうなぎにしか心を開くことができなくなった男が繰り広げる物語。監督は「ええじゃないか」「黒い雨」などの名匠・今村昌平。出演は、人間味あふれる演技で世界を魅了した役所広司ほか、清水美砂、柄本明、田口トモロヲ、常田富士男など、日本映画を代表する名優たち。 これは妻の浮気によって人間不信に陥り、唯一飼っているうなぎだけに心を開く中年男と、そんな彼をとりまく人たちの交流を描いた人間喜劇である。イマヘイさんのよく言う重喜劇でもある。 1988年夏、サラリーマンの山下拓郎(役所広司)は妻の浮気を告発する差出人不明の手紙を受け取った。夜釣りに出かけると家を出た彼は早々と釣りを止めて帰宅、不倫の現場を目の当たりにする。 山下は激しい怒りに駆られて妻に出刃包丁を何度も何度も突き刺して殺してしまい、自首する。愛を裏切られた山下の怒りの深さを思わせるシーンだ。それから8年、刑務所を仮出所した山下は、千葉県佐倉市の住職・中島の世話で、利根川の河辺に小さな理髪店を開業した。人間不信に陥っていた彼は、仮釈放中にトラブルを起こしてはならないこともあって近所づきあいもせず、飼っているうなぎを唯一の話し相手に、静かな自戒の日々を送っていた。船大工の高田がうなぎを友とする山下に興味を持ち、近づいて来る。高田はうなぎに詳しくヤスで漁もしているのだ。 ところがある日、うなぎの餌を採りに行った河原で、山下は多量の睡眠薬を飲んで倒れている女性を発見した。服部桂子(清水美砂)というその女性は、山下によって命を救われるが、山下は「東京に帰りたくない」と言う彼女を店で使うよう、保護司で住職の中島の妻・美佐子に押し切られてしまう。 金融会社の共同経営者で愛人でもある堂島との関係や、精神病の母・フミエとの血のつながりから逃がれたいと思って自殺を図った桂子と関わりを持つことは、彼にとって迷惑でしかなかった。 しかし、明るい彼女のお陰で店は繁盛するようになり、また山下の気持ちも次第に解きほぐされていく。だが、そんな山下の前に刑務所で知り合った男・高崎が現れた。出所し、ゴミ回収の仕事に就いていた高崎は、桂子と幸せそうに働いている山下をやっかみ、桂子に山下の前歴をバラしたり、怪文書を店先に張ったり、山下のSEX経験をバカにしたりと執拗な嫌がらせをしてくる。 一方その頃、堂島の子を身ごもっていることが判明した桂子は、山下の前から姿を消した。過去を清算するために上京した彼女は、母を秋田の病院に帰し、堂島の会社から3000万円もある預金通帳を取り戻すと再び山下の元へ戻ってきた。 しかし、堂島はそれを許さなかった。山下の店へ先回りした彼は、帰ってきた桂子から金を奪い返し、彼女を連れ戻そうとする。ところが、それまで桂子の愛を頑なに拒絶し続けていた山下が、あえてトラブルに巻き込まれると承知しながら、堂島から桂子を守る。山下の抑えていた怒りが爆発し大立ち回りとなり、店は目茶滅茶に壊れる。山下は堂島とのトラブルで刑務所に戻されることになったが、様々な人たちとの交流を通して人間性を取り戻し、桂子とお腹の子を受け入れて、これからの人生を生きていくことを決心する。ラストシーンは明るい希望に満ちている。 車で刑務所に向かう途中、理髪店の前で降ろして貰う山下は桂子と会う。 桂子は用意していた弁当を手渡し、 「ここでお帰りを待っていていいんですね?」と聞くと、山下は 「丈夫な子を産むんだ」と元気付け、車に乗り込む。 動き出した車のなかで、山下は刑務官にボソッと言うのだ。 「うなぎが旅をするのを知ってますか?」 「え、何だって?」 「赤道まで行って帰ってきて・・・ここの泥水の中で生きるんです・・・」 最後のセリフは意味しんである。桂子のSEXシーンも体操のようにダイナミックである。ともかく一見しておいて損はない傑作だ 1997年 松竹・カラー 監督 今村昌平 出演 役所広司 清水美砂 佐藤允 ブログランキング参加中 応援よろしくお願いします ↓ 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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