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原爆による黒い雨を浴びたために人生を狂わせられてしまった女性と、それを暖かく見守る叔父夫婦とのふれあいを描いた作品である。原爆症により苦しまねばならない不条理が胸を痛いほど打つ。今村昌平監督はじっくりと向き合い、苦しみを見せてくれる。 昭和20年8月6日、広島に原爆が投下された。その時郊外の疎開先にいた高丸矢須子(田中好子)は叔父・閑間重松(北村和夫)の元へ行くため瀬戸内海を渡っていたが、途中で黒い雨を浴びてしまった。20歳の夏の出来事だった。 5年後矢須子は重松とシゲ子(市原悦子)夫妻の家に引き取られ、重松の母・キンと4人で福山市小畠村で暮らしていた。 地主の重松は先祖代々の土地を切り売りしつつ、同じ被爆者で幼なじみの庄吉(小沢昭一)、好太郎(三木のり平)と原爆病に効くという鯉の養殖を始め、毎日釣りをしながら過ごしていた。村では皆が戦争の傷跡を引きずっていた。 戦争の後遺症でバスのエンジン音を聞くと発狂してしまう息子・悠一(石田圭祐)を抱えて女手一つで雑貨屋を営む岡崎屋。娘のキャバレー勤めを容認しつつ闇屋に精を出す池本屋。誰もが悩みを抱えていた。悠一は普段は石を相手に石像を彫っているのだが、エンジンの音を聞くと飛び出していき、車の前に枕を持って突っ込んでいく。急ブレーキをかける車。 「戦車に布団爆弾をかかげて体当たりする特攻でのう、そのときの恐怖で、エンジンの音を聞くとああなるんじゃ」と庄吉が説明する。 重松の悩みは自分の体より、25歳になる矢須子の縁組だった。美しい矢須子の元へ絶えず縁談が持ち込まれるが、必ず“ピカに合った娘”という噂から破談になっていた。 重松は疑いを晴らそうと矢須子の日記を清書し、8月6日に黒い雨を浴びたものの直接ピカに合っていないことを証明しようとした。 「叔父さん、私、もういいんです。嫁には行きません。黒い雨にも毒があったいうことじゃけえ」 矢須子はこういうのだ。その心情は痛いほど良く分かる。 やがて庄吉、好太郎と相次いで死に、シゲ子が精神に異常をきたした。一方、矢須子はエンジンの音さえ聞かなければ大人しく石像を彫り続けている悠一が心の支えとなっていった。しかし、黒い雨は時と共に容赦なく矢須子の体を蝕み、やがて髪の毛が抜け始めたのだった。 遂に矢須子も倒れ、病院に担ぎ込まれる。その車を見送りながら重松がいう。 「あの空に7色の虹がかかったら、矢須子はきっと元気になる」と。 戦争に対する静かな憤りがこみ上げてくるようだ。田中好子は健気に生きる矢須子を好演している。 1989年製作 今村プロ モノクロ 監督: 今村昌平 出演 田中好子 北村和夫 市原悦子 沢たまき 立石麻由美 小林昭二 石田圭祐 小沢昭一 ブログランキング参加中 応援よろしくお願いします ↓ 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.06.24 22:57:45
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