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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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この作品は終戦直後の時代を過ごした人間にとって忘れられないメモリアルフィルムである。

その1:開巻早々、軽快なグレン・ミラーの曲「イン・ザ・ムード」に乗って、厚木飛行場に到着するマッカーサー、ミズーリ艦上の調印式などを見せてくれ、タイトル・クレジットが流れる。実にスマートな出だしだと私は思った。

昭和20年9月の淡路島。江坂町国民学校の初等科5年男組の級長、足柄竜太、バラケツ(ヤクザ)志望の正木三郎らは担任の中井駒子先生(夏目雅子)の指示に従って、国語の教科書の不適表現箇所を墨で塗りつぶしていた。

当時、9歳の私は岡山で陛下のお言葉を聴いたが、何のことやらさっぱり分からず異様な雰囲気だけが頭の隅に残っている。教科書を塗りつぶした記憶はないが、ほとんど真っ黒けの教科書を手に戸惑ったのは忘れられない思い出だ。

映画の中で海軍大将になることが夢だった三郎、父母を亡くした竜太、仲間のデブ国、ニンジン、ボラ、ガンチャ、ダン吉、アノネも、何にたよってよいか皆目見当がつかなかった。私も彼らと同じように精神的迷子だったと思う。


その2:進駐軍は友達だった!?
映画のように復員軍人が帰郷し、後を追うように進駐軍がやってきた。アメリカ兵に群がってガムやチョコを貰ったのは勿論、缶詰め、タバコまでせしめたものだ。私達は学校の往き帰り、ジープや軍用トラックまで停めて、車に乗り込み送ってもらうのが楽しみだった。「ヘイ、ストップ!」と道路に飛び出すと間違いなく止めてくれた。そして、戦利品をせしめて家に帰るのだ。これは暫く続いたように思う。


その3:赤いリンゴと手縫いのグローブ
バラケツはじめ少年たちは駒子先生の勧めで野球を始める。ご多分に漏れず、私も野球で育った。グローブなど到底手に入らず、母に手縫いのグローブを作ってもらったものだ。映画を見ているとその思い出が脳裏に甦ってくるようだ。手縫いのグローブでキャッチボール、リンゴの唄を歌いながら・・・。


その4:戦後は遠く風化してゆく・・・
駒子先生の主人は生きていた英霊として島に戻ってくる。3本足の姿で。義弟に犯されて会うことを拒否するのだが、バラケツたちが仲を取り持つことになる。一方、武女の父”提督”はBC級戦犯として島から護送されていく。そして・・・シンガポールで死刑の判決を受けて死んでいく。

バラケツ一人が島を出る武女の連絡線を岸壁から追い駆ける。叫び声を上げながら・・・。


その5:いつまでも心に残る珠玉の作品!!
敗戦直後の淡路島を舞台に、野球を通して子供たちに民主主義を学ばせようとする女教師と、スポーツに目覚めていく子供たちとの絆を描く。原作は阿久悠の同名小説で昭和五四年度下半期の直木賞候補作品である。夏目雅子が実にさわやかでいい感じだ。

1984年 ヘラルド 監督 篠田正浩 出演  大森嘉之  佐倉しおり  夏目雅子  大滝秀治  加藤治子  渡辺謙 ちあきなおみ  伊丹十三  郷ひろみ  岩下志麻 

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Last updated  2007.09.19 12:18:11
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