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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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カテゴリ:東宝映画


林芙美子原作の映画化。不実で自堕落な男に対して燃えるような情念を抱きながら、淡々と男に従いその愛に殉じる女、これが前年『二十四の瞳』で健気な大石先生を演じた、あの高峰秀子なのかと公開当時、大きな話題になったものである。

その1: この映画の公開後に結婚を控え 引退を考えていた高峰だったが・・・

昭和30年3月に松山善三との結婚を控えていた高峰は、撮影中は今作限りの引退を考えていたというが、その決意を撤回させたほど、映画は大好評だった。

そんなトップ女優に全ての力を発揮させた相手が、ベテラン俳優の森雅之と成瀬巳喜男監督であった。


その2: 一見 女にもてそうにも見えない富岡が何故次々に女をモノにする

こんな男が何故と思うのだが、富岡(森雅之)には目に見えない魔力でも備わっているのだろうか。そうでも考えないととても理解出来ない。44歳の森は、妻がありながら高峰演じるゆき子との縁が切れず、更に人妻のおせい(岡田茉莉子)にも手を出す。

己の愚かさを知りながら、どうにも出来ない破滅型の男、富岡。こんな醜悪そのものの男に”いのち”まで吸い取られてしまうゆき子が何とも哀れである。
「私、屋久島に住めなかったら、ここで料理屋の女中をしたっていいわ。女って、それだけのものよ。捨てられたら、又それはそれとして・・・生きて行くんだわ・・・」
屋久島へ渡る連絡船を待つ旅館でゆき子はこういうのだ。ここには少々のことには動じない女のしたたかさを感じるのだが・・・

「いや、本当の話が、別れ時と勘定時が大切なんだ、人生ってものはね」
これは富岡がゆき子に訥々と話すセリフだ。


その3: 成瀬巳喜男の真骨頂とは・・・

その作風から”ヤルセナキオ”とも呼ばれていた成瀬にとって『浮雲』は1951年製作の『めし』以来、映画化してきた林芙美子の小説の5作目に当たる。

平凡で醜悪でさえある男と女を描きつくすこと、それこそが否定できない人間の真の姿であり、成瀬流の人間讃歌だといえよう。

ポッカリ浮かんだ雲のような人間の心、落ち着きどころを探して風のまにまに漂うのが人間という生き物の姿なのかも知れない。

ともあれ「浮雲」は戦後文芸映画の白眉の一作だ。昭和30年キネマ旬報ベストテントップ作品である。

1955年 東宝・モノクロ 監督 成瀬巳喜男 出演者 高峰秀子 森雅之 中北千枝子 岡田茉莉子

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成瀬巳喜男の傑作集





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Last updated  2007.10.09 10:08:25
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