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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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カテゴリ:松竹映画



『隠し剣 鬼の爪』に続く、藤沢周平原作による山田洋次監督の時代劇シリーズ第3弾。

武士が命をかけて守らなければならない名誉や面目-「武士の一分」とは・・・ 


その1: お毒見役 それは何と重い仕事だろうか?

三村新之丞(木村拓哉)は、最愛の妻・加世(檀れい)とつましく暮らす、海坂藩の下級武士だ。「早めに隠居して、子供たちに剣を教えたい」と夢を語っている。

笑いの絶えない平和な日々は、藩主の毒見役をつとめて失明した日から暗転。絶望し、自害しようとする新之丞。光を突然失った武士はどう生きればよいのか?

「おれは死ぬ。何の値打ちもねえ男になってしもうた」
「あなた、そげえなことはありません」
「おれは何にも見えねえんだぞ!俺の刀を出せ!!」
怒りに我を忘れる新之丞。加世は必死に思い留まらせる。

「あなたのお命があったら、どんげなめにあつてもいい」
加世は毎日お百度参りをして夫の回復を祈る。そして、
「あなたがいなくなったぐれえなら・・・そんなこと、考えられません・・・」
と、新之丞に泣きながら取りすがるのだ。

毒見役、それは藩主の命にかかわる大役なのだ。藩主の口に入る食べ物に異常があればそれを瀬戸際で阻止する、まさに自分の命を賭けた大役なのである。

こうした仕事は今でも密かになされているであろうことは想像出来る。命を狙われているVIPは多いだろうから。


その2: 愛する妻を離縁しなければならない身を切られるような辛さ

加世は愛する夫のため、口添えを得ようとして罠にはまり、番頭・島田藤弥(坂東三津五郎)に身を奪われてしまう。

加世の気持ちも思いやることもなく、怒りに駆られて加世を離縁する新之丞。

義を重んじ、卑怯を憎む侍としての「心」と、ひとりの男としての「愛」の狭間で、新之丞の怒りは激しく燃え上がり、己の「一分」をかけた復讐を心に誓う。

「どうしたんだ、お前、何があったんだ。酷なようだが、お前は目が見えんのだ。ひとかどの侍相手に真剣勝負しようなど狂気の沙汰だ。相手は誰なんだ、場合によっては助太刀しても良い」
「勘弁してください、武士の一分としか申し上げられまっせん」
剣の師匠(緒形拳)に問われても新之丞は稽古を受けながらも口外しない。

しかし島田は藩内きっての剣の使い手。目の見えぬ新之丞の無謀な果し合いに勝機はあるのだろうか。

「共に死するをもって真となす。必死すなわち生くるなり」
命を賭けて守らなければならない愛がある。闘わなければならない愛がある。
そして死を賭して闘った果し合いで新之丞は島田の片腕を切り落とす。

お目付けの調べにも島田は何も云わず、自刃して果てた。まさか相手が盲人の新之丞とは想像をぜっしていたのだ。


その3: 失われた夫婦の愛情は再び取り戻せるのか

飯炊き女として新之丞の下に来た女、彼女は加世だった。
「お前の作った煮物の味は忘れられん」
こうして加世と新之丞は抱き合うのだった。

夫婦の愛の物語であり、白刃閃く復讐譚でもあるこの異色作は、山田時代劇三部作のフィナーレを飾るに相応しいまぎれもない最高傑作と云えるだろう。

木村拓哉は必死に取り組んだだろう。その真剣さが画面から流れてくるようだ。加世を許す心の広さが実にさわやかである。面白いのは桃井かおりのおしゃべりさんの扱いであろうか。

夫婦の愛情の有り方を考えさせられる作品だ。新之丞に比して、自分は・・・?? と反省させてくれる。


2006年 松竹・カラー 監督 山田洋次 出演 木村拓哉、檀れい、笹野高史、小林稔侍、緒形拳、桃井かおり 坂東三津五郎

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Last updated  2008.03.05 11:27:38
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