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カテゴリ:東宝映画
深夜の社殿。井坂伊織をはじめとする9人の侍が集まり、上役の汚職を暴き出すための密談をしていた。意気高揚する若侍たちの前に、やがて社殿の奥から1人の素浪人が現れる。 身なりは粗末で口も悪いが、三十郎と名乗るその素浪人の話を聞くうちに、井坂は彼に頭の切れと頼もしさを覚え、三十郎に同志になって欲しいと頼む。 黒澤明監督の名作を、森田芳光監督が、主演に織田裕二を迎えてリメイクした作品。 黒澤版では、三船敏郎が彼ならではの迫力で椿三十郎を好演していたが、本作では織田裕二が人間的な魅力で若侍たちを惹き付け、理想のリーダーとしての三十郎を熱演している。また、仲代達矢が演じた室戸半兵衛に扮するのは、実力派の豊川悦司。風間杜夫や小林稔侍、藤田まことなど、共演陣にも豪華な顔ぶれが揃っている。 その1: 織田三十郎は三船三十郎を超えられたか? 物語の内容もセリフまでも前作とほとんど同じという凝った演出である。織田、豊川ともによくやっているのだが、やはり三船、仲代を超えられていない。森田監督はなぜこれをリメイクしたのであろうか。 ラストの決闘場面だけは明らかに違う。切り結んだ際、互いの刀を抜き取り、それで相手を切り伏せるというシーンが見ものといえば見ものである。 城代家老・睦田役の藤田まことはどうだろう。 「わしのこの間延びした馬面にも困ったもんだ。昔のことだが、わしが馬に乗ったのを見て、誰かがこんなことを云いおった。”乗った人より馬は丸顔”」 若侍たち、必死で笑うのをこらえる。 馬面を撫でる藤田まことだが、ここも馬面では前作の伊藤雄之助を超えられない。何しろ馬面では天下一品の雄之助だからだ。 その2: 室戸半兵衛役の豊川の不気味さはどうだろう? これも豊川の芝居はもうひとつと云わざるを得ない。キャラクターの違いだろうか。仲代の演技には恐怖を感じたものだが・・・。 「どうしてもやるのか?」と三十郎。 「やる。貴様みたいにひどいやつはいない。人をコケにしやがって」と半兵衛。 「そう怒るな、仕方なかったんだ。俺は貴様に一目置いてたんだ」 「今更、何をぬかしやがる。抜け!」 「俺はやりたかねえ。抜きゃ、どっちかが死ぬだけだ。つまらねえぜ」 「ほざくな、抜けッ!」 懐から手を出す二人、一瞬、同時に二人の手が・・・ その3: 抜き身のような人間とは・・・ 切れ味鋭い三十郎と半兵衛、家老の奥方が三十郎に言う。 「あなたはギラギラしてます。まるで抜き身のように。いい刀はちゃんと鞘に入ってるもんですよ」 頭を掻いてみせる三十郎。 最近は抜き身を下げて歩いているような人間が増えてきたように思う。 2007年 東宝・カラー 監督 森田芳光 出演 織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍、中村玉緒、藤田まこと 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.07.05 15:00:10
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