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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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カテゴリ:松竹映画



今見ても新しい昭和28年ごろの親子関係。「親と子の成長する姿を通じて、日本の家族制度がどう崩壊するかを描いてみたい」という製作意図のとおり、瀬戸内海に面した港町、尾道と東京を舞台に、人生の終盤を迎えた老夫婦の孤独を描いたものである。


その1: 老夫婦は子どもたちとの再会を楽しみに東京へ向かうが・・・

尾道で暮らす平山周吉(笠智衆)と、とみ(東山千栄子)夫妻は、独立した子どもたちが生活する東京へ出かけるが、日々の生活に追われる彼らには、老父母をやさしく迎える心の余裕もない。

そんな中で戦死した次男の未亡人紀子(原節子)だけは、義理の父母に誠意をつくす。

紀子は義父母を東京見物に案内するが、長男で町医者の幸一夫婦(山村聡、三宅邦子)や美容院を営む志げ夫婦(杉村春子、中村伸郎)は父母を熱海に行かせる。

熱海は落ち着けるどころか若者たちが明け方まで騒ぐ喧騒の温泉地、寝不足の二人はうんざり、とみはふらっとして倒れかける始末。


その2: 早々に熱海を引き上げた二人だったが・・・

「とうとう宿無しになってしもうた。服部さんでも訪ねてみようかのう」
と周吉はつぶやく。
「それがいいです、私は紀子さんを・・・」
と、とみ。

服部を訪ねた周吉は友人の沼田を呼び、3人で飲み屋で旧交を温める。沼田は子供のことで飲みながら大いにボヤクのだ。
「子供っていうやつはおらにゃおらんで淋しいし、おりゃぁおるでだんだん親を邪魔にしよる、二つええことはないもんじゃ」
「しかしなあ沼田さん、わしも今度出てくるまで息子がもちっとましになってると思うとったんじゃが、町外れの町医者じゃ。じゃがな、高望みしてもそれは親の欲目、欲張ったらきりがない。わしゃ、そう思うたんじゃ」
「あんたまでそう思うたか?」
「思うた」
「そうじゃのう、今時の若い者の中には平気で親を殺す奴もおるんじゃから、それを思うたらなんぼうかましか、ははは・・・」


その3: とみの突然の危篤の知らせ 子どもたちは尾道へ駆けつける

やがて尾道へ帰った二人を不幸が見舞う。とみは尾道で急死、大阪に住む三男坊敬三も駆けつけてくるが死に目には会えない。葬儀が終わると子どもたちは慌しく故郷を後にする。

後には紀子だけが残った。その紀子にも帰る日が・・・

地元で小学校の教師をしている末娘の京子が紀子に言う。
「でも良かった、今日までお義姉さんにいていただいて。兄さんも姉さんももう少しおってくれても良かったと思うわ」
「でも、皆さん、お忙しいのよ」
「でもずいぶん勝手よ、云いたいことだけ云って、さっさと帰ってしまうんですもの」
「仕方ないのよ、お仕事があるんだから」
「だったら、お義姉さんもあるじゃありませんか。自分勝手なのよ」
「でもね、京子さん」
「お母さんが亡くなるとすぐお形見ほしいなんて、私、お母さんの気持ち考えたら、とても悲しくなったわ。他人同士の方がもっと温かいわ。親子ってそんなんじゃないと思う」
「でもね、京子さん、子どもって大きくなるとだんだん親から離れていくものよ。お姉さんだって決して悪気があってしたんじゃないのよ」
紀子はやさしく京子を説得するのだ。

京子が学校へ行ったあと、周吉が紀子に語りかけるシーンは感動的だ。
「・・・自分が育てた子どもより、いわば他人のあんたのほうが、よっぽどわたしらにようしてくれた。母さんも言ってたよ、紀子さんちへ泊めてもらった夜が一番嬉しかったと。わしからも礼を言うよ。・・・いやあ、ありがとう」
そんなこと、当たり前のことですわ」

そして一人になった周吉を寂寥感が包む。この映画はやはり名作だ。


1953年 松竹・モノクロ 監督 小津安二郎 出演  笠智衆 東山千栄子 山村聡  三宅邦子 杉村春子 中村伸郎 原節子 大坂志郎 香川京子 

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Last updated  2008.07.14 20:30:38
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