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『牛頭』は「ごず」と読む。三池崇史監督のVシネマ作品。タイトルの通り「極道ホラー」であるが、これが爆笑に次ぐ爆笑の大傑作。久しぶりに映画を観て声を上げて笑った。この作品はカンヌ映画祭の監督週間に招待されてもいる。これがカンヌで上映され、どんな印象を与えたんだか…。
字廻(あざまわり)組の構成員である南は、兄貴分である尾崎を誤って殺してしまう。その死体をどうしようか考えあぐねているうちに、尾崎の死体は消えてしまう。南は躍起になって死体を捜し始めるが、徐々にアンビバレンスな世界に引きずり込まれる…というストーリー。 「もしデビッド・リンチが極道Vシネマを撮ったらどうなるか?」という発想の元に制作されたこの作品。 しかも舞台は名古屋で。 喫茶店に行けばコーヒーに茶碗蒸しが付いてくる名古屋で。 観ているこちら側は「どう展開するの?」という期待でワクワクしてしまう。しかも脈絡のないシーンがいきなり挿入されたりと、そこはかとなくデビッド・リンチ風味の三池崇史節全開である。 たとえば 尾崎の行方を尋ねに行った酒屋の嫁がロシア人にしか見えないアメリカ人で、バカ丁寧な日本語を明らかにカンペを読みながら喋る。しかも三池監督は開き直ったのか、カンペを丸出しにして、主人公と一緒に読ませる。マジで笑った。 主人公の南が宿泊する民宿の老婆は、夜な夜な乳を搾り牛乳瓶に詰めて配達している。ここでの乳房は作り物であるが、『ビジターQ』では内田春菊が自前の母乳で水芸をしていた。三池監督は「母乳」に強いこだわりがあると見受けられる。 主演は曽根英樹。Vシネマの世界ではそこそこ有名な人で、この映画の発起人でもある俳優・曽根晴美(男)の息子である。気弱なヤクザを巧みに演じていて感心した。 相手役の女に吉野きみ佳。かなりキワどいセリフが目立つ。しかもラストでは日本映画では前代未聞のとんでもないことになる。三池監督は女優には容赦ないことで有名だが、ここまでやらせちゃって、今後の吉野きみ佳の芸能活動が心配である。とまあキワどい役どころではあるが、ファム・ファタール的な女を魅力的に演じていて印象的である。 そしてこの映画で観客の頭に焼き付けれられるのが哀川翔である。尾崎というヤクザを演じているのだが、この尾崎という男は車を見れば「あれはヤクザを轢き殺すために開発されたヤクザカーだ」と言い、可愛いチワワを見れば「あれはヤクザを殺すヤクザ犬だ」といってチワワをギッタギタにする、かなりアブないヤクザである。そしてこの尾崎もラストでとんでもない生還劇を見せる。 他の出演者もこれまた面妖な悶絶オールキャスト。冨田恵子・曽根晴美・火野正平・間寛平・木村進・加藤雅也・遠藤憲一・長門裕之などなど。 そしてヤクザの親分役に石橋蓮司。ここで石橋蓮司はケツの穴におたまを突っ込みまくっている。こうして前立腺を刺激しなきゃ勃たないヤクザなのだ。石橋蓮司の芝居はマジでヤバい。これをカンヌで披露するとは、役者というのは大変な職業である。 三池監督とこの作品の脚本家である佐藤佐吉が言っていたのだが、映倫審査というのもけっこう微妙らしい。たとえばこの映画でも濡れ場があるが、「入れて」というセリフはオッケーだが「もっと奥まで」と言ってしまっては成人指定になってしまうらしい。そして「チンポコ」はダメだが「ポコチン」ならオッケーらしい。どっちもおんなじだと思うが。わけわからんちん。 とにかく三池監督ブラックホールに引きずり込まれてしまう作品である。作品自体が強力な磁気のようなものを発しているので「何でもオッケー」の牛地獄なのである。かなり濃厚な人間観と世界観が混じりあった、これは生まれるべくして生まれた傑作Vシネマである。 エンディング曲が強烈。朗らかな女性の歌声で ♪ごめんねおじちゃん乳牛だけど~ お乳が出ない~お乳が出ない~ だって~おじちゃんオスなんだもん♪ と歌われる。頭から離れない。困った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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