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今年の5月、米国議会における不法移民に対する規制を強化する法の制定の動きに対し、メキシコの大統領、ビセンテ・フォックスが、アメリカで働くメキシコ人がアメリカ社会にもたらす価値を示すために
(メキシコ人はアメリカで)「黒人でさえやりたがらないような仕事をしている」 "En Estados Unidos los mexicanos hacen trabajos que ni los negros quieren hacer" と発言をして騒ぎになりました。 アメリカの黒人団体がこの発言は黒人を蔑視していると猛烈に抗議し、メキシコとしては、大統領発言には人種差別の意図はまったくなかった、とちょっと苦しい説明を押し通しました。 そんな矢先、今度はメキシコで、Menin Pinguinという1940年代からある漫画のキャラクターの切手が発売され、再びアメリカの反感を買い、切手は最初に用意したものが売切れ次第、販売停止となりました。 Menin Pinguinの主人公は愛敬のある黒人ですが、その容姿が厚い唇など黒人の肉体的特徴を面白おかしく誇張したものであり、話の中でその言動が白人の笑いものになったりしていることから、人種差別的であると黒人団体が猛抗議したそうです。 フォックス大統領は、Memin Pinguinはメキシコの重要な文化の一つであると主張しましたが、ホワイトハウスのスポークスマンも不快感を顕にした末の販売停止になってしまったこの切手、すでにメキシコのオークションなどで高値で販売されているようです。 日本で長年親しまれてきたカルピスの黒い顔をしたキャラクターのロゴが廃止になったり、60年代のタカラの大ヒット商品、だっこちゃん(私も持っていました)が販売中止になったり、絵本「ちびくろサンボ」が1988年から1999年まで11年もの間絶版になったりと、黒人をモチーフにしたキャラクターは人種団体から抗議を受けやすく、私が子供の頃から純粋に可愛いと思って親しんでいた図柄や作品が80年代後半に次々に姿を消していきました。 Memin Pinguinだって、作者がキューバを訪れたときの印象に基づいて親しみを込めて作り上げたキャラクターだそうで、私もキューバには行ったことがあるのでその気持ちは理解できますが、決して黒人を蔑むとか馬鹿にして作られたわけではなく、むしろ親愛の情を込めて作られた人懐こくちょっと滑稽な癒し系のキャラで、人々から深い愛着を持たれているわけです。 大体、スペイン語ではlos negros(黒人の意味)という単語やそれに絡んだ表現を普通にしますし、そんなこと言ったらオシだとかカタワだとかいう差別用語だって全然差別の意識なく使ってしまう言語です。 5月の「黒人でさえやりたがらない仕事」に関する発言は(たとえその意図がメキシコ人のdirigencia(勤勉さ)とvalor(アメリカ経済・社会に対する有益性)を強調するものだとしても)、明らかに差別的な意味合いを含んでいますしので、フォックスを擁護する気は毛頭ありませんが、黒人キャラを巡っては文化の違い、国民性の違いがあるわけで、一概にアメリカ的な価値観に照らして悪である、と批判するわけにはいかないと個人的には思います。 まあ、非常にセンシティブ(今風に言うと、「ビミョー」)な問題なので、この辺にしておきますけど。 以下、サンスポの記事より: ニュース速報:2005年7月3日(日) 【社会】切手図柄めぐり差別論争-メキシコ、米から回収要求 【メキシコ市3日共同】メキシコ郵政公社が人気漫画キャラクターの黒人少年を記念切手の図柄に採用したところ、米国の黒人運動家らから「差別を助長する」として回収要求が出る騒ぎに発展した。背景には、人種の違いにかかわる表現に寛容なメキシコと、敏感な米国社会の意識の差があるようだ。 切手になったのは1945年から発行が続いている漫画の主人公「メミン・ピングイン」。唇が厚く、鼻が低いなど身体的特徴が誇張されて描かれている。6月29日の発売以降、米黒人運動指導者ジェシー・ジャクソン師らが切手の回収を要求しているが、メキシコ側は応じていない。 メキシコでは肌の色に関する愛称や冗談が友人同士やテレビなどで普通に交わされ、こうした表現に対する社会規制が米国ほど厳格ではない。黒人の割合が推定で全人口の1%以下と低いことが要因ともされる。 メキシコのフォックス大統領は5月、メキシコ移民が「黒人もやりたがらない仕事を米国で引き受けている」と発言し、ジャクソン師らから批判を浴びたばかり。 今回の論争についても、同大統領はAP通信とのインタビューで「私が子どものころから親しまれている漫画で、(批判は)理解できない」と発言。一方、マクレラン米大統領報道官は「人種的な固定観念は、どのような由来があろうと不快なものだ」と批判している。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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