Dave Jordan - Away From Home (1975)
マイケル・ジャイルズの70年代セッション暦は非常に幅が広く多岐にわたっており、70年代当時その全貌をつかむのは大変困難でありました。近年はネットでの情報集積も手伝い、思いがけぬ作品にその名前を見つける事も可能となりました。今回もその一枚といえます。Dave Jordan - Away From Home (BRADL 1006)FrontA1 Street Corner Music A2 Don't Let Me Lose You A3 We'll Get It Right This Time A4 Computer DataA5 Whoever You Are B1 I'm Still On My Way B2 The KidB3 The Other Side Of TimeB4 Blue Movie Queen B5 God's Own Country 1975年に英国はブラッドリーズ・レコーズから出されたデイヴ・ジョーダンのソロ作品。ブラッドリーズと言うと、最近高値の人気作品となっているレンゾン・アンド・ハズバンドやハンター・マスケットを出していたレーベルでした。深いグリーンで彩られたジャケット同様、奥行きのあるサウンドも豪華で丁寧でブライトな響きに彩られています。当時流行っていたシンセサイザーをあえて使わない作りで、そういう意味でこの頃のブリン・ハワースにも近しい手作りの音にこだわった姿勢ともいえます。 クレジットをみると英国レコーディング後のリミックスをロサンジェルスのウェストレイク・オーディオでわざわざ行なっています。音の立ちが素晴らしく、きらびやかで繊細なサウンドが一つ一つ存在感を持って響いてきて、まさにLPならではだなと感じさせてくれる逸品と思いました。ほとんど無名ですし、注目も浴びず安く売られているアルバムですが、予想を遥かに超える音に出会えた喜びを感じます。Back 参加メンバーも通好みで、ドラムスはマイケル・ジャイルズの他にヘンリーー・スピネッティ。マイクの叩く曲は、サウンドからしておそらくA-1、3、4、B-1が彼の叩いた楽曲にあたると思います。他にLAパーカッションとしてフランク・リコッティもクレジットされています。ベースにはグラハム・プレスケットとロイ・バビントンとリズムはベテラン勢がガッチリとサポートしています。プレスケットは本作も大活躍でアレンジやオーケストラ指揮にキーボード、そして例の艶っぽいバイオリンソロと縦横無尽に作品に貢献しています。さすがジョージ・マーティン直系仕事人。サウンドのクリアさはずば抜けています。(特にA面に顕著でした。) 他にもスチール・ギターにBJコール、フルートとサックスにジミー・ヘイスティングスと、この頃のジャイルズ先生が共演する機会の多かった達人が参加しています。Credit そして、この作品を魅力溢れる一枚にしてる最大の点は、主人公であるデイブ・ジョーダンのジェントリーで素晴らしい楽曲たちでしょう。68年と70年に本人名義でシングルを出した他、70年代前半いくつかのアーチストへ曲を提供したソングライターだったそうなのですが、軽やかで爽やかな風に舞うようなA1(シングルカット曲)から始まり、しっとりと聞かせるA2、カーペンターズ初期の様なドラマティックな展開A3, ブライアン・フェリーの初期ソロ作を思い起こさせるA4、徐々に盛り上がり天使のようなコーラス隊とパイプオルガンで荘厳に終わるA5, コールの美麗なスチールギターに導かれる優しいメロディと歌声が大変魅力的なB1、ヘイスティングスのサックスが曲を引き立てるB2、うって変わって煌びやかなアコギに美しい歌声が光るB3はまさに70年代中期のサウンドそのもの、セカンドシングルB面にも収録されたB4はB2と違ったブラスセクションの華やかさ、アルバム最後のB5はまたもA面ラスト同様劇的な展開で盛り上げてアルバムは終わります。今これを書きながらも、入念に洗ったLPから24Bit96KHZで取り込んだ音源を繰り返し聴いてます。YOUTUBEにA1のみ見つかったのでご参考まで(曲が始まるまで1分ちょっと説明が続きますw) 一つ一つの楽曲をじっくり練り上げて作りこまれたアルバムであることは間違いありません。当時日本でこれだけの素晴らしいサウンドがほとんど注目を浴びなかった理由を考えて見たのですが、一部歌詞にも見受けられるようにクリスチャンミュージックの系統の可能性はありそうですね。市場が一般向けではなくて日本では黙殺されたのかもしれません。あくまで推測ですが。 ジャイルズもそうでしたが、元クリムゾンでクリスチャン系のセッション活動を70年代以降に行なったメンバーたちも割りとおりましたね。ジョン・ウェットン、ゴードン・ハスケル、メル・コリンズなど。そういう意味でこのアルバムの持つジェントリーさ煌びやかさ、そしてどう考えてもお金かけてるなと思わざる得ないサウンドプロダクション。そしてジョージ・マーティンの弟子たちはクリスチャン系も数多くプロデュースしておりましたから。バック面が仕事師揃いなのもそういうのが関係してるのかなと考えてます。 アルバムに話を戻しますが、ジャイルズ先生のプレイでココまでドラムの音一粒ひと粒が立って聞こえる作品も珍しいです。レコーディング時の手間は相当凄そうですがw スタジオ側の仕事もすばらしいわけですね。そこその状態の良い本作を2016年現在海外で買おうとするとおよそ20~30ドル前後となると思います。当然ですが海外からの購入は当たりはずれがありますので、購入の際は自己責任にてご検討ください。そして海外から買うと必ずあるのが送料の問題。安い業者は6ドル程度の送料でも送ってくれますがぼったくる業者は20ドル以上掛かる場合もあります。現物を扱う業者の送料の項目も良くチェックしましょう♪今作品の後に出されたセカンドシングル盤Someone Like You(75年7月25日発売)は、A面がアルバム未収録です。当時よくあったパターンではありますが、仮に本作がCD化される事が今後あったとしたらレニー・マクドナルドのCD化みたいにボートラに収録されるかもしれませんね。1/5追記:ニュージーランド出身のデイヴ・ジョーダン氏は、1968年キウイレーベルからデビューアルバムを発表。二曲連続でトップシングルを記録。ポール・サイモンやボブ・ディランに喩えられる才能であった。ロンドンに渡ってからは、チャペルミュージック専属作曲家として、またプロデューサーとして様々なアーチスト作品に関わった。75年のセカンドアルバム「Away From Home」ではロンドン交響楽団とも共演している。1980年代、多発性硬化症を患い、故郷のニュージーランドへ戻った。2004年、クライストチャーチ病院で肺炎で逝去。(デビュー時からの友人/ギタリスト、デイヴ・キャルダー氏の記事より意訳)