サーカスである。一昔前に日本のコーラスグループの「サーカス」が「サーカスというグループは世界に私たちしかいない」とイベントで発言し、プログレ仲間のスタッフ共々「少なくとも3つはあるよなぁw」とニヤリとしていたものだ。欧州の80年頃のバンドとインディのCIRKUS、そして今回取り上げるメル・コリンズがクリムゾン前に在籍していたCIRCUSだ。
さてこのサーカス、70年代後期には2万程で取り引きされてはいたが、発売元がトラッド系で有名なトランスアトランティック。このメーカー、60年代の古いトラッド作品は末長く発売してくれたのだけどねぇ。ビニールコーティングされたジャケットは経年変化で材質がかなり変質しているので、良い状態のものが残っているとは思えない。現に3枚ほど買い替えたけど余り良くはない。盤もラッカーの質が余り良くはない。
とはいえ、69年頃のライブシーンでかなり注目を浴びていたバンドだったのでLPにもその乗りが感じられる作りとなっている。プロデュースのレイ・シンガーがどういう経歴の持ち主なのかは分からないが、純然たるジャズロックとして制作していれば、もっと名盤扱いもされる作品にもなれたんだろうけどね。ちょびっとフォークロック調だとか混じった不思議な選曲となっている。いかにもライブの様な構成の演奏をそのまんま収音してオーヴァーダビングもほとんど無いようだ。同じ時期のイギンボトムもそうだが短時間に曲をどんどん録音したのか、定位や音像、バランスや音色等がほとんどどの曲も変わらない。
なんだかんだいっても当時のジャズロックの息吹を伝える意味においては重要な作品である。日本を始め幾つかの国でCDでも復刻されているので、比較的手に入れ易いはず。当時のジャズロック系の中では実力はかなりのレベル。ただ、メルが発売直後にロバートにヘッドハンティングされて解散の憂き目に遭っちゃいましたけど(苦笑)。
これを買った77年頃丁度同じ日のバーゲンにCIRKUSもあって「こっちの方もいいよ」「1万だけど7000でいいや」とか散々言われたが、こちらを聴くのはだいぶ後であった(爆)。だって、その頃あのLP知っている奴なんかエジソンの店員しか居なかったもん。