70年代からNHKでドラマとドキュメンタリーの渾然とした幻想的な作品を残してきた映像作家である。彼の作品の特徴はその撮影する地域や分野の人々をそのまま起用し、その世界を浮かび上がらせる手法にあるのだろう。以前にもNHKにて彼の作品群を紹介する特集があったし、映像センターで特集上映会も模様されたと記憶している。個人的にも彼の作品を発表当時に見て至極感化された口なのであるが、いかんせん放映当時はゴールデンタイムの民放の裏で放映された為、一部の注目に留まった感もあったのだった。
想い出深い好きな作品としては70年代半ば~80年代にかけて発表された中尾幸世主演での一連の作品がある。南欧の田舎で当地の人々との心のふれあいと想いの交錯を夢のような儚さで描いたり、田舎から上京しピアノを調律しながら成長して行く少女の物語などであった。また、紅い花等つげ義春作品へのオマージュ作品もあった。
個人的にはスカパーのCSには加入していないが、この6月の日本映画専門チャンネル(707ch)において
RESPECT-佐々木昭一郎と言う特集が組まれ、全16作品が一挙に上映されるそうである。
現代においてその実験性は特別な手法とも言えないのかもしれないが、30年以上も前の日本でこれだけの素晴らしい作品がいくつも作られていた事は特筆すべきものである。大手の映画会社やTV局には為し得なかった彼の独自の映像世界に触れてみるいい機会になるのかもしれない。また、今回の特集には当時の出演者や制作関係者等が本編上映後にその映像世界の魅力を振返る特別番組も用意されているらしい。多くの監督に多大なる影響を及ぼし、近年に行われた上映会でも熱狂を起こし、ソフト化を望む声も多い佐々木氏の作品たち。この盛り上がりが作品に触れる機会を増やしてくれる事を望みたい。