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カテゴリ:70’S
ストーリーズ、70年代の始めのニューヨークのアートロックムーブメントに短いながらも鮮やかな軌跡を描いた名バンドであった。 66年のWalk Away Renee等の大ヒット曲を放ち今もカルト人気を持つレフトバンクの元メンバーであったブルックリン育ちのマイケル・ブラウン(本名マイケル・ロフコフスキー:Keyb)が、旧友のイアン・ロイド(本名イアン・ヴォンコンシグリオ:Vocal/B)と新たなグループを計画し、ニューヨークでスティーヴ・ラヴ(Guit)とブライアン・メイディ(Dr)を迎えバンド設立。 カーマストラと契約し2枚のアルバムと世界的な大ヒットシングル「ブラザー・ルイ」で成功を収めたかにみえた。(ブラザー・ルイはオリジナルがホットチョコレートによる名曲であるが、当時世界的にカバーされており、中でもストーリーズの物は全米1位も記録している。日本に置いてもザ・ベストテンの前身の久米宏と小島一慶のラジオ番組において年間チャート7位にランクされた。ちなみにその年の1位がカーペンターズのイエスタディワンスモア。) バンドデビュー時にはツェッペリンのサウンドにロッド・スチュワートの歌声等と宣伝もされたストーリーズだが、元々ブラウンもイアンも英国のマージービートに多くの影響を受けただけにサウンドアプローチには英国的な解釈を数多く聴きとれる。 この後、中心メンバーのマイケル・ブラウンの脱退によりバンドは再編成を余儀なくされる。ブルックリン生まれの達者なベーシスト、ケニー・アーロンソンを迎えイアンはヴォーカルに専念。ブラウンの後任のキーボードにはデトロイト出身の実力派ケネス・ビッチェルが加入した。 本アルバム Traveling Underground は、バンド名をIAN LLOYD & STORIESとし、再出発を計る通算3枚目のアルバムとなった。 この3枚目では大胆なアレンジメントとカラフルで変幻自在なサウンドが、バンドの新たな意気込みを感じさせている。 IAN LLOYD & STORIES/Traveling Underground (米Kama Sutra)-1973 CD再発は1993年 カナダ ONE WAY Records Ian Lloyd : Vacals Steve Love : Guitars Kenneth Bichel : Keyboards, ARP Synthesizers, Mellotron Bryan Madey : Drums, Percussion Kenny Aaronson : Bass プロデュースはバンドとKenny kerner&Richie wise シングルカットされた4、5曲目がKenny kerner&Richie wise 1、BRIDGES(I.Lloyd) イアンの手によるアルバム冒頭を飾るドラマティックな名曲。 ビッチェルの華麗なピアノから始まり、ラヴのうねる様な艶っぽいギターが印象的。エンディングのピアノとバンドの絡みは当時のELPのトリロジー等も連想させる。 2、SOFT RAIN(S.Love,I.Lloyd) イントロでラヴの奏でる美しく重層的なアコースティックギターはグレッグ・レイクっぽくもあるが、歌が進行するとブリッジで一転、アメイジング・ブロンデルぽいアープの使い方が英国風の淑やかささえ感じさせる。メイディのドラミングはマイケル・ジャイルスっぽいかもしれない(笑)。 3、HARD WHEN YOU'RE SO FAR AWAY(S.Love) ダイナミックでワイルドでたたみ込むドラミングソロのイントロ、カウントからバンドが一斉に演奏を開始するとまるでイタリアのPFMのような細やかなパッセージの応酬へと展開する。リズムセクションが鮮やかにさらりと淀み無く変化し、その実力の高さを意識させない。しかし楽曲の完成度もアルバム中1番かも。ビッチェルのアープのフルートサウンドがクリムゾンの宮殿風なのは彼なりのオマージュか。 4、IF IT FEELS GOOD,DO IT(J.Stevenson)、 シングルカット用にプロデューサーサイドで用意された楽曲なのかもしれない。黒人教会の日曜礼拝でのゴスペルの大合唱の盛り上がりを想像させるような乗りの良いシンプルなナンバー。イアンのシャウトが曲にハマッている。 5、MAMMY BLUE(Giraud/Trim) ポップトップスのヒットの他にも世界中で多くのアーチストが取上げた名曲。 マネージメントサイドでは彼らに「ブラザールイ」の夢よもう一度と歌わせたのだろうか? 以前のストーリーズっぽいサウンドであり、アルバムのプログレ臭濃密な作品群の中ではかえって浮き上がって聞こえるから面白い。演奏のタイトさとブルージィな歌声はこれはこれで味わい深い。ストリングアレンジはラリー・ウィルコックスでいかにも70年代初期の風合い。 6、STORIES UNTOLD(I.Lloyd) LP発売時にはB面1曲目だった。 サビの盛り上がりでグイグイ引っ張るイアンの歌声がストーリーズの真骨頂。アルバム全体に言えるがメロトロンの使い方は割と控えめであるし、オルガンもさほど前面ではない。リック・ウェイクマン顔負けのビッチェルの煌びやかなプレイは、やはりピアノやハープシコードやクラビネットの使い方の巧さによく顕われている。 7、I CAN'T UNDERSTAND IT(S.Love) ラヴの手による73年当時のリアルなストレートロックナンバー。 当時を知る世代には懐かしさも思い起こさせるギターアレンジである。ギター・ベース・ドラムスの演奏でシンプルに構成されておりビッチェルは参加してない。 8、EARTHBOUND/FREEFALL(I.Lloyd, K.Bichel) 打って変わって今度はビッチェルの華麗なピアノから重厚なオーケストレーションへ導かれる。 オリジナルメンバー当時のキャメルや日本のサディスティック・ミカ・バンドの黒船、果ては初期イエスを思わせる繊細なサウンドの綴れ織り。 9、TRAVELING UNDERGROUND(I.Lloyd) アルバムタイトル曲はのっけっから重たいリズム隊とシンセの洪水。 そしてクールなラブのリフレイン。 やはりここでもビッチェルのキーボードプレイのセンスの良さが最後まで聞き物になっている。シンセの使い方が若干色物めいているのは73年というまだシンセサイザー自体が珍しかった時代ゆえか。 ちなみにストーリーズのアルバムは当時の日本でも全作品発売されていた。 アルバムからカットされたシングルは73年にMammy Blue(米50位)、74年If It Feels Good, Do It(米88位)となっている。 このアルバム発表後、グループはラヴの脱退から新ギタリストのリッチー・ラノの加入もあったが、程なく崩壊したようである。 また、解散後にイアンがソロアルバム(以前取上げました、こちらからどうぞ)を制作するが、その作品がフォリナー結成のきっかけとなったのは以前紹介した通りである。このソロ作品には元ストーリーズのメンバーもかなり関わっており素晴らしいプレイを披露している。 バンド解体後は、全員がセッションミュージシャンとしてアチコチに名前を残しており、イアンはフォリナー、フォトメイカー、イエス、ピーター・フランプトン他に自身のソロ。ビッチェルはホール&オーツ他、ラヴはジャニス・イアン等他のメンバーも様々な作品に足跡を残している。 現在CDでさえ入手の難しいストーリーズの一連の作品ではあるが、この作品だけは現在アマゾンで新品在庫が出てきたようでまだ若干あるようである。中古CDでとんでもない高値で買う必要はないですな♪ベスト盤に5万とか馬鹿げた値段付いていたのには驚かされたものね。 音が悪いけど試聴も出来るアマゾン内のこのCDの販売ページはコチラから ============================ 余談:ちょいと前に取上げたHUNTER MUSKETT の再発CD 新宿ディスクユニオン・プログレ館にありました(汗) 「名盤!」と書いてありましたが至極当然のことであります! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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