|
テーマ:キングクリムゾン(655)
カテゴリ:プログレッシヴ・ロック
今まで楽天ブログにキングクリムゾンのテーマで多くの投稿をしてきた。既に多くの人が書いている事はあえて避けてきたが、40周年と言う事で彼らの初期の傑作を今一度振り返ってみよう。
2月の22日が来ると、キングクリムゾンとしてオリジナルメンバー達が初めてコンサート演奏してから、丁度40年になる。キングクリムゾンの成り立ちの紆余曲折も手伝ってか、メンバー個人ごとにどの時点がバンドの派生時点かは思いが異なる。シンフィールドは、自分が組んでいたフォークバンド、インフィニティでクリムゾンキングの宮殿の原詩を別のメロディでギターを弾きながら書いた時といい、フリップはマイケル・ジャイルズとGGFを発展する為のグレッグを加入させる話し合いを夜中に詰めた時と思ってるかもしれない。メンバーだけでは無い。GGFの最後のカラー・ミー・ポップでの演奏を観て、バンドのマネージメントを決断したエンゾーヴェンやゲイドンにしても然り。 最後のピース、パワフルなグレッグ・レイクを招き、68年末からの準備を経てバンドがリハを始動した69年1月13日。それまでメンバーの意図を超えた展開が勢い良く廻り始めた。公園の散歩中ピートが当時のベトナム戦争への怒りの感情を詩に書き起こし、メンバーがパーツを持ち寄ってダイナミックな楽曲へと組み上げた21st Century Schizoid Man 21世紀の精神異常者は、その前年までの彼らから想像できない突然変異とも言える、宮殿と共にバンドを象徴する曲。バンド初期からその圧倒感を既に感じさせるが、69年5月BBCラジオや初期ライブ音源とレコードでの演奏にはアレンジに若干の差異があり、レコーディングでもより慎重に練りこまれた事が判る。 クリムゾンを最初にプロデュースしようとしたのは、かのトニー・クラークだが、最初に取り上げたのがこの曲であった。その後クラークとのセッションを断念、バンド自らプロデュースをやり直したのはファンに有名だが、アルバム制作で一番最後に作り上げたのもこの曲。まさに21世紀の精神異常者で始まり、終わった1STアルバムだったのである。 =========================== 最初の30秒間、スタジオに置かれていたオルガンのエアーノイズを組み合わせた異様な効果音から始まる。 グレッグ・レイクの持ち込んだ有名かつ重々しいリフは、この曲において最も重層的にオーバーダブが施されている。サックス、ギター、ベース、ファズベースが聴き手に迫る中、ドラムスの3連フィルが引っ掛かってくる。(レイクリフと以下記す) レイクの押し込まれるようにEQ加工されたシャウトが響き始めると、スタカート気味の歪むギターの4分刻みにカラフルに妙な効果音が被る。シンフィールドやピート・ジャイルズが働いていたコンピュータ会社の関連で、既に当時シンセサイザーを製作し始めていたデビッド・コッカレルのVCS3の開発を覗きに行っていた彼らも、その効果を使うのは3枚目のリザードまで無いが、概念としてローパスっぽい加工のピンクノイズ風の効果音が使用されている。歌が進むとベースとドラムスが雪崩れ込み、ブレイクと共にキメのフレーズが唄われ、レイクリフへ繋がる。 2度目の歌が終わりレイクリフの後に半音ずつ上がる部分が徐々にスピードアップし、フリップの手によるリフが続く(以後フリップリフと記す)。その後マクドナルドが軍隊時代に書いたビッグバンド楽曲スリー・スコア・アンド・フォーのフレーズが元となる演奏パートが始まる(以後マクドナルドリフと記す)。この部分は春頃の演奏では、まだ引き摺るような演奏であったが、レコード製作段階ではリズムがかなり滑らかに手直しされていて、ジャイルズのドラミングがアイディアに溢れている。フリップによるロングトーンギターが顔を出して、リフの終わりにロングトーンからまんまギターソロへ雪崩れ込む。 ギターソロとサックスのソロは、8TRオープンテープでオケ部分の収録とヴォーカル録音が終わった後に取られたが、フリップは3日間アイディアを練り上げてから挑んでいる。バックを支えるベースとドラムスのこなれたリズム、ジャイルズのアクセントをずらして聴き手をはぐらかす部分がクールだ。入れ替わりでマクドナルドの2本のサックスソロが始まる。メロディやフレーズになる事を慎重に排除したサックスは、互いに囃し立てるように煽りあい、ドラムスのタムの波打つ中に最終的な唸りを上げて舞い上がって消えていく。 後に残るベースの8分刻みに再びマクドナルドリフが絡み、ベースが高揚感を高めた所で、ジャイルズが発案した全員一斉の高速ユニゾンパートが始まる。途中3連を織り交ぜた高速ユニゾンリフはカチッと収まり、続く後半はフリップの手による変則拍子に仕上げられ、再び高速リフに繋がりブレイクを織り交ぜて緊張感を高めていく。リフが終わり、ジャイルズのドラムスが一瞬ほとばしると、レイクのベースグリスダウンがそれまでの緊張を一気に開放し、フリップリフでギターとサックスのユニゾンが再開される。リフの終わりで3連譜が目くるめく様に打ち鳴らされる中をフリップのギターがスライドで切り裂いて、レイクリフが姿を現し、ジャイルズのドラミングは以前よりツーバスを強調し、より凶悪な圧力を押し出していく。 3番の歌を唄い終わりレイクリフが終わり、再び半音ずつ上がりながらスピードを増していき混沌を呼び込みながら収束し、マクドナルドの呼び込みでまた一度洪水を呼び込み終焉する。この混沌の後に、次の「風に語りて」が整然と始まる事が、非常に強いコントラストを生んでいる。 =========================== Islandレーベルから発売されたファーストアルバムは、初期マトリクスのみがオリジナルマスターの音源で、以後はマスターが行方不明になり、セカンダリーやサード以降のジェネレーションでプレスされた事が今では広く知られている。その不明だったオリジナルマスターの再発見で、近年はファイナルヴァージョンCDなどでその音に触れる事が出来るようになった。私も初めてファイナルヴァージョンを耳にした際には、そのダイナミックさに圧倒され、今まで飽きるほど数限りなく繰り返し聴いてきた楽曲に新たな驚きを発見したりもしたものです。 クリムゾン・キングの宮殿(ファイナル・ヴァージョン) ※一気に書いたはよかったが、後で誤植を入れ替えました(汗)。勢いに任せるとやっぱりミスが多いなぁ、反省。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 18, 2009 12:52:30 AM
コメント(0) | コメントを書く
[プログレッシヴ・ロック] カテゴリの最新記事
|
|