コレリ大尉のマンドリン
「恋とは一時的に衝撃に襲われるようなものだ。地震のように揺れて、やがて治まる。治まったら考えるのだ。二人の根があまりにも深く絡み合っていたら、別れることはもう不可能だ。それが愛というものなんだよ。愛は胸の高鳴りや息苦しさ、抱き合うことじゃない。体中を這う彼のキスを夜中に想像することでもない。」我々が映画を観る理由なんて、実にシンプル極まりない。楽しみたいからだ。ドキュメンタリータッチの反戦映画には、残酷な殺戮シーンや目を覆わんばかりの惨たらしい場面もあったりするが、わざわざ情報収集のためだけに足を運ぶ観客は少ないだろう。基本的には「感動」を求めて映画を観に行くはずだ。メッセージ性の強い社会派映画は、時に製作者サイドの意図があからさまに出てしまい、おもしろさや楽しさが半減されてしまう場合がある。逆に作り手が一人でも多くの大衆に受け入れられようと、興行的成功をねらって努力を重ねた作品の方が、結果として社会性や政治性を帯びた内容になったりする。「コレリ大尉のマンドリン」は、昨今の反戦映画としては他に類を見ない、格調の高い芸術的センスにあふれた素晴らしい作品だ。1940年、第二次世界大戦下のギリシア・ケファロニア島が舞台となっている。イタリア軍が隣国のアルバニアへの侵略を開始する中、ギリシアもその脅威にさらされていた。島の医師の一人娘であるペラギアは、ハンサムな漁師マンドラスと恋仲。知性と教養のあるペラギアに引きかえ、マンドラスは文字も読めない無学な青年だったが、ペラギアは盲目な恋に夢中。マンドラスはペラギアと婚約した後、アルバニア国境へと出兵。その後、彼の消息もわからぬまま一年が過ぎてゆく。ケファロニア島はイタリア軍とドイツ軍に占領される。島民たちの不安感や緊張感をやわらげたのは、イタリア軍のアントニオ・コレリ大尉だった。彼の背中には、マンドリンが背負われていた。コレリとその部下たちは、陽気で楽しげなイタリア人らしく合唱隊を組んでいた。ペラギアはそんな彼に心惹かれてゆき、二人は恋に落ちる。フランシス・F・コッポラの甥であるニコラス・ケイジが、この作品では七光りに恥じない好演を果たしている。キャスティングを見たら驚くようなそうそうたる顔ぶれで文句のつけようもなく、ワンカットワンカットの映像美は観客の視線を釘付けにして止まない。原作を裏切らない脚本はラストまで実に見事な奥行きを持たせ、音楽に至っては厭味なく、しかも効果的に流れていた。名匠ジョン・マッデンにスタンディング・オヴェイションを送りたい。「ブラボー!!」 2001年公開【監督】ジョン・マッデン【出演】ニコラス・ケイジまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)