ハリウッドランド
「慣れてるわね、あなたは・・・?」「ジョージ・リーブス・・・何か変なことを?」「(いいえ)楽しいだけ。」「その楽しい女性の名は?」「トニー。」「気の毒に、苗字なし。笑いが花開いた!」「アソコまで開きそう・・・どう?」ミステリアスなムードは、人の好奇心を煽る。対象が人間なら、その人物をもっと知りたいと思うし、探ってみたい衝動に駆られるだろう。もしもそれが映画なら・・・そのミステリアスな作品にどっぷり浸かってしまいたくなるのでは?真相を知りたいと思いつつも、藪の中に隠されたままの方が、よりドラマチックであったりする。消化不良をおこしそうになっても、その作品からかもし出す限りなく黒に近いグレーゾーンをじっくりと反芻すれば良い。各人の持つイマジネーションが、最高のラストを演出してくれるに違いない。この作品は、50年代に起きたハリウッド史上最もミステリアスな事件を基に制作されたものである。子どもたちのヒーローであるスーパーマンを演じていた俳優ジョージ・リーブスが、ハリウッドの自宅で謎の死を遂げた。成り行きで私立探偵のシモは、事件の真相を追うことになる。ジョージには映画会社の重役夫人のスポンサーがあったこと。思うようなキャスティングにつけない苦悩や、複雑な親子関係。心の隙間を埋めてくれる、肉欲だけの女友達。様々な闇が、ジョージという俳優を暗く覆っていた。シモは、それらを一つ一つ暴いていくが、彼の前に大きな壁が立ち塞がる。そう、ハリウッド界の黒幕から重い圧力がかかるのだ。いつもはソフトで軽いタッチの役回りが多いベン・アフレックが、この作品では悩めるスーパーマンを好演している。売れない役者から脱却するために、あの手この手で立ち回るジョージ・リーブス。己が好むと好まざるにかかわらず、顔を売るため、名を売るためにどんなつまらない役も引き受けるという人物設定を、ベン・アフレックが孤独な魂を引き摺る男として見事に演じていた。さらに、しがない私立探偵役としてエイドリアン・ブロディが、人生をあきらめたような退廃的なムードを漂わせて好演。作中、ジョージ・リーブスが亡くなるまでのプロセスを追っていく一方で、シモがあれこれ様々な角度から推理していく演出は素晴らしかった。空間や時間を自在に操るカットバックは、ヒッチコック監督を彷彿とさせ、久しぶりにサスペンスの大作を観たような気がした。2007年公開【監督】アレン・コールター【出演】エイドリアン・ブロディ、ベン・アフレックまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)