再会の街で
「大丈夫か?」「(俺は)どうなるんだ?」「警察に身柄を預ける。2~3日だよ。・・・精神鑑定を受ける。アンジェラと僕が君のそばにいて・・・何も問題がないように気を配る。」ベタなのはわかっているが、イギリスのパンク・ロックバンドのフーの楽曲“Love, Reign over me”を採用しているのは、とても良かった。「愛の支配」と聞いて、視聴者は何を感じるだろうか。作品は9.11事件の後遺症をモチーフにしたものだが、どんな事件にせよ愛する者を失うという悲劇に見舞われた者の心の痛手を癒すというのは、並大抵のことではない。人間は理屈のみで生きているわけではなく、いかに感情の中で生かされているかがよくわかる。壊れてしまった自分を取り戻すには、効果的な向精神薬を服用するより、無償の愛を注がれることがなにより。絶望の淵をさ迷い歩くより、いっそ誰かに刺し殺してもうらうか、過って射殺されることの方が数倍もラクなことなのかもしれない。ニューヨークで歯科医を営むアランは、仕事も家庭にも恵まれ、生活には何不自由なく暮らしていた。ある日アランは渋滞中の車内から何気なく外を眺めていると、大学時代のルームメイト、チャーリーが歩いているのを目撃する。チャーリーは9.11事件で妻子を亡くして以来、消息がわからなくなっていたのだ。 アランは急いでチャーリーを呼び止めるが、チャーリーは気付かずにそのまま通り過ぎて行ってしまう。後日アランは街でチャーリーと再び遭遇。親しげに話しかけてみるものの、チャーリーはアランのことを覚えていないようす。しかも、それはどうやら精神的な原因によるものらしかった。一見、何の問題もなさそうに見えるアランにしても、職場でのストレスや妻とのささいなすれ違いに戸惑いを隠せない。程度の差はあるけれど、人は皆“同じ穴の狢”なのかもしれない。チャーリーだけが病んでいるわけではない。私も、あなたも、皆病んでいる。その苦悩を緩和させることのできる唯一の特効薬、それが「愛」なのだと言わんとしている。誰もがどん底の状況にもがき苦しんでいる中、どうにか生きていけるのは、「愛の支配」に救われる自分が存在するからなのだ。この作品は、複雑な現代社会を生きる様々な立場の人々に発するエールのようにも受け取れる。2007年公開【監督】マイク・バインダー【出演】アダム・サンドラー、ドン・チードルまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)