王妃の紋章
「王子の謀反はいかなる処罰が適当か?」「車裂きの刑です」「傑、朕は・・・お前を罰せずともよいのだ。・・・だが、条件が一つ。これからは毎日、お前が母上に(トリカブトの毒の入った)薬を飲ませて差し上げろ」「・・・母上、力及ばぬ息子をお赦しください(自害し、絶命する)」何だかんだ言っても、中国を舞台にした歴史大作というのは、まるでスケールが違う。 ちまちましたセットではないし、身に着けるもののゴージャスなこと、大掛かりなエキストラの起用など、とにかく圧巻の一言。次から次へと息を呑むような場面の展開、目の覚めるような絢爛豪華な宮廷、それはそれは圧倒的な迫力のもとに視聴者を釘付けにする。なにぶん、内容的には歴史の哀切極まりない悲劇がクローズアップされており、決して後味の良いものではないかもしれない。親と子の悲哀、歪んだ愛情、そして夫婦間の憎悪。この治まりどころのない感情が噴き出したような、そういうストーリーに仕上がっている。舞台は中国、五代十国時代。菊の節句の祭日を前に、王妃は原因の今一はっきりしない拒寒症に悩まされていた。一見、病気がちな王妃をことさら気遣っているような王であったが、その実、トリカブトの毒を混ぜた薬を数時間置きに王妃に飲ませているのが原因であった。王妃が、先妻の子である第一王子と継子でありながら不義をはたらいていることが王の逆鱗に触れたのだ。だが、真相はもっと根強く、深い闇の底にあった。ストーリーがあまりにも“痛い”作品であった。単なる嘆きとか恐れの域を越えた、心に痛みを伴うシナリオというのは、そうそうお目にかかれない。鑑賞中の2時間は、何度画面から目を背けたことか数知れない。それほどのショッキングなストーリーというわけだ。(決してグロテスクなシーンではない)自分では抱えきれないような重苦しい感情と、倒錯した人間模様に、さすがに疲れ果ててしまった。舞台セットや衣装、演技力、それにカメラワークなど、どれも一級品なのでぜひともおすすめの大作なのだが、この作品と真正面から対峙する時の精神状態、健康面においては、万全の体調で鑑賞することを希望する。一見の価値あり。2006年(中)、2008年(日)公開【監督】チャン・イーモウ【出演】チョウ・ユンファ、コン・リーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)