P.S.アイラヴユー
「親が苦しむのは子に先立たれた時と・・・子が自分と同じ人生を歩むのを止められない時よ。自分の無力さを呪うわ。腹が立って仕方ない。私も怒ってた。・・・ずっと長い間。もう疲れたわ。(中略)独りぼっちでも・・・歩き出すのよ。忘れないで、独りぼっちなのは・・・あなただけじゃない」役者の演技力について、少しだけ触れておきたい。(まず、吟遊映人は単なる映画好きの、芝居に関しては全くのド素人であることをお断りしておく。)自分も含めてごくごく一般ピープルでも、役者の演技が若さやルックスだけではとうていフォローできるものではないということを知っている。演技力とは、ある意味、存在感かもしれない。本作で痛切に思い知らされた。それは正に、キャシー・ベイツがスクリーンに登場した時の、えも言われぬ、他を寄せ付けない圧倒的な演技力の素晴らしさを目にした時だ。これは完全に主役を食ってしまっている。キュートでセクシーなヒラリー・スワンクも、残念ながらキャシー・ベイツとの共演で見事に打ち負かされてしまった。キャシー・ベイツは、主人公ホリーの母親役として登場する。90年代前半に公開されたスティーヴン・キング原作のホラー映画「ミザリー」で、アカデミー主演女優賞を受賞した実力派女優なのだ。「ミザリー」を観た時、キャラクターのあまりのパラノイアぶりに、この女優さんはもしか、私生活でもこうなんじゃないの?・・・と疑ってしまったほどだ。だが裏を返せば、それほどまでに完璧な演技を披露してくれるプロフェッショナルな役者さんということでもある。N.Y.のマンハッタンで、毎日を夫婦喧嘩に明け暮れながらも、陽気に明るく暮らしていたホリーとジェリー。そんな中、ジェリーは脳腫瘍で35歳という若さで夭逝。残されたホリーは幸せだった日々を忘れられず、毎日鬱々とした気持ちで過ごす。ある日、ホリーが30歳の誕生日を迎えた晩、亡き夫ジェリーからバースデーケーキと共に手紙が届く。そこには、これから毎日ジェリーからのメッセージやアドバイスが寄せられると書いてあるのだった。やや感傷的なストーリーだが、夫を亡くした若い未亡人が長い月日をかけて立ち直っていく姿が、厭味なく表現されている。女の友情や親子の絆に支えられ、癒されていく主人公。その役を演じていた女優さんも実にチャーミングで、屈託のない笑顔で視聴者を釘付けにしてくれる。そして何より、主人公の母親役を演じていたキャシー・ベイツが「独りぼっちでも歩き出すのよ。忘れないで、独りぼっちなのは、あなただけじゃない」というセリフを言った時の、清々しい表情に注目していただきたい。この映画「P.S.アイラヴユー」は、正に、このセリフのために制作されたのではと思われるほど力強く、視聴者を惹き付けて止まないのだ。2007年(米)、2008年(日)公開【監督】リチャード・ラグラヴェネーズ【出演】ヒラリー・スワンク、ジェラルド・バトラーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)